中1でヤングケアラーになる

柿生さんが小6の年末。その日は大雪だったが、年末年始の買い物をするため、72歳の祖母を除く家族で車で出かけた。数時間後、留守番で残った祖母は、出かけた柿生さんたちのために、雪かきをしておこうと思ったようだ。一人で雪かきをし終えた祖母は玄関に入った途端に倒れてしまう。

買い物から戻り、倒れている祖母を発見したのは柿生さんだった。すぐに父親が救急車を呼び、母親と妹はさっさと家の中に消える。

祖母は、「ヒートショックに起因する脳血管障害とそれに伴う脳の損傷による認知症」と搬送先の医師に言われた。

「寒いところからいきなり温かいところに行くと、脳の血管が破れることがあるそうです。祖母は血圧がちょっと高い程度でしたが、年齢もあり、脳血管障害を起こしてしまったようです」

道路の雪かき
写真=iStock.com/terminator1
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祖母は畑で年中沢山の野菜を育て、漬物を作っていた。中でも北陸地方の冬の名物“かぶら寿し”と梅干しがおいしいと、近所の人からも絶賛されていた。

「ただ、昔ながらの作り方で塩分が多く、長く高血圧の治療を受けていました。なので、ついに血管が限界を迎えてしまったのかもしれません」

祖母は何度か命の危険を乗り越え、柿生さんが中1になった頃にようやく退院することができたが、半身麻痺と認知症の症状が出るようになってしまい、要介護4と認定された。

最初は両親が祖母の介護をしていたが、もともと折り合いが悪い3人なので喧嘩が絶えない。ある日、認知症のために食事に対する執着が強くなった祖母は、勝手に冷蔵庫にあった作り置きのおかずを素手で食べているところを両親に見つかる。

その日から両親は祖母の介護を放棄し、「お前は昔からお祖母ちゃんと仲が良かっただろ」と柿生さんに押し付けた。以降、祖母の食事や薬の管理、徘徊予防のための定期的な家の施錠の確認、トイレへの誘導、安否確認や就寝確認などを1人で担当することになった。