「So What?」によって浮かび上がる将来のビジネスのネタは、置かれた立場によって異なることに注意したい。

例えば電気自動車から「So What?」を考えるとする。ハイブリッド車に注力していない日産や三菱自動車は、電気自動車の普及を前提に「So What?」を重ね、次のアクションを考えるかもしれない。一方、すでにハイブリッド車で利益をあげるトヨタ自動車やホンダは、赤字覚悟の低価格でハイブリッド車を販売して、電気自動車の普及を阻止する戦略もありうる。さらにいえば、体力のあるトヨタはハイブリッド車と電気自動車の両方にリソースを注ぎ込んでもいい。このように同じ現象から先を読むとしても、自社の立場から「So What?」を繰り返すことが重要だ。

5年後となれば、従来のビジネスモデルが通用しなくなっている可能性も考慮に入れなくてはいけない。音楽業界では1980年代にレコードからCDへの技術革新があったが、レコード会社は既存の垂直統合型のビジネスモデルをそのまま展開できた。しかしCDからインターネットを利用した音楽配信の時代になって、レコード会社は業界の1プレーヤーにすぎなくなり、「iTunes Store」を運営するアップルのようなディストリビューター(流通)が主役になりつつある。

ここで必要なのは、「自分たちは何屋か」「どこに強みがあるのか」という自社のレゾンデートル(存在理由)やコア・コンピタンス(中核的な力)を再確認することである。例えばレコード会社なら、アーティストとの関係を深めてコンテンツで勝負するのか、それとも従来のブランドを活かして市場側に軸足を移し、ディストリビューターになるのか。その意思決定をしてこそ、技術革新や産業構造の変化に対する「So What?」が意味をなすのだ。

時代の変化を敏感に察知することは大切だが、軸がふらついたまま5年後を考えても戦略は定まらない。ビジネスのネタを探す前に、まず自社のレゾンデートルやコア・コンピタンスを見つめ直すべきだろう。

(構成=村上 敬 撮影=市来朋久)
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