ウーバーもグラブもない日本はまさにガラパゴス
新型コロナが明けて、インバウンドの外国人旅行客が増加してきたことで、日本のタクシーサービスへの不満が一気に爆発している。配車アプリで呼んでも捕まらず、いつ来るか分からないタクシー乗り場で待たざるを得ない。配車アプリで呼ぶ人が増えれば、ますますタクシー乗り場にやってくるタクシーが減るという悪循環になっている。
海外からの旅行者は日本のガラパゴスぶりにほとほと呆れている。東南アジアで普及している「Grab(グラブ)」などのアプリでは、事前に登録した行き先に黙っていても連れて行ってくれ、申し込み時に示された料金が登録したクレジットカードから引き落とされる。やってくる車はタクシーも、個人の乗用車も選ぶことができる。もはやライドシェアは世界の多くの国々で使われている共通インフラなのだが、先進国であるはずの日本に行くとひと昔前の発展途上国で苦労した運転手とのコミュニケーションが待ち構えている。ウーバーもグラブもない日本はまさにガラパゴスなのだ。
岸田首相は既得権者と国民のどちらを向いているのか
「国民が岸田政権に対し、もうひとつ物足りないと感じているのは、スピード感ではないでしょうか」
10月25日の参議院本会議での代表質問でこんな苦言を呈したのは野党議員ではなく、自民党の世耕弘成議員だった。何が遅い、と言ったのか。2つ目の具体例としてこう述べた。
「各地でタクシー不足、バス不足が顕在化し、地方おける生活・観光が破綻しかかっています。ライドシェアについてもいつまでも議論するのではなく、期限を切ったスピード感を持って関係者の調整を行い、腹をくくって、実現しなければなりません」
もちろん、タクシー業界は「安全・安心」を盾に反対の声を上げている。客をいくら待たせても、車に乗せなければ安全であることは間違いないが、タクシー業界の利益のために国民の生活が破綻し、旅行者の不評を買っても致し方ないと言うのだろうか。果たして岸田首相は腹を括って解禁を決められるのか。既得権者と国民のどちらを向いている政治家なのかが問われることになるだろう。