バウアーはなぜ一流の投手といえるのか
しかしNCAA加盟の大学では、講義を受けるだけではなく、ディスカッションをしたり、研究発表をしたり、アスリートであっても一般学生と全く変わらない知的活動をすることが求められる。そしてそのレベルに達しなければ、容赦なく大学を追われるのだ。
NCAA加盟の大学で学んだアスリートは、スポーツの能力だけでなく、知的レベルでも一流になっている。野球をやめてもビジネスの分野でも通用する人が多い。「野球人のネットワーク、人脈」などに依存する必要はない。
また、野球をする上でも「知的レベル」が高く「自分自身で探求できる」ことは、大いに有利だ。
今季、DeNAベイスターズで活躍したトレバー・バウアーはNCAA加盟の名門カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の出身だが、新しい変化球を編み出すために、トレーニングジム「ドライブラインベースボール」に先進の映像測定機器「エッジャートロニックカメラ」を持ち込み、変化量、変化軸などを測定しながら、新たな変化球を開発し、2020年にサイ ヤング賞を取ったという。
上から指示された練習をして、言われるままにフォームを改造するような、日本のこれまでの選手とは次元が違うことが分かる。
日本のスポーツ界では可能性がつぶされるだけ
佐々木麟太郎は確かに傑出した選手ではあるが、あの体形からして「適応力の高い選手」とは言い難い。上手くいけばスラッガーとして活躍するだろうが、そうでなければ埋もれてしまう可能性も少なくはない。
佐々木麟太郎の父である花巻東・佐々木洋監督は、教え子の菊池雄星、大谷翔平がアメリカに移籍後、意識レベルでも肉体でも大きく進化したことに着目したはずだ。
極めて強い個性をもつわが子の可能性を大きく花開かせるために「アメリカ留学」を勧めたのではないか。
それは「野球選手としての成功」だけでなく「一人の人間としての活躍のフィールドを広げる」ことを考えたのではないか。
翻って、野球のみならず日本のスポーツ界は、相変わらず上下関係と人脈に凝り固まっている。
聞こえてくるのは日本大学アメフト部の「薬物汚染」、立教大学野球部の「暴力沙汰」、同大陸上部の「不倫」のような、次元の低い不祥事の話ばかりだ。
佐々木麟太郎だけでなく、将来性豊かなアスリートは、どんどん海を渡ることだろう。この人材流出を日本のスポーツ界は「深刻な危機」だと受け止めるべきだろう。