清掃車がリサイクル工場に物を運ぶイメージ

もちろん、大半の人はこの恒常性を日常で意識する事はほとんどないでしょう。「おお、今日も細胞のおかげで昨日と変わらず元気だ」なんていう人はいません。

ただ、体の中でこうした調節がされていることは感覚的に知っているはずです。ですから、体温が39度もあれば、なんだかおかしいなと気づきますし、体重が1週間で5キログラムも減少したら、病気かなと疑うわけです。

恒常性が失われると体が一定に保たれなくなります。つまり病気になるわけです。細胞が恒常性を失う原因はいろいろありますが、病気は細胞がこれまでどおりの活動ができなくなることで起こります。細胞がおかしくなることが病気の原因の一つです。

胚性幹細胞
写真=iStock.com/luismmolina
※写真はイメージです

ですから、人間にとって細胞を正常に保つことは非常に重要です。そして、オートファジーは細胞を正常に保つ重要な役割を果たしています。

オートファジーはモノの名前ではありません。「細胞の中の物質を回収して、分解してリサイクルする」現象あるいはシステムです。

細胞内の「社会」のお話をしましたが、そこでのオートファジーのイメージとしては清掃車がリサイクル工場に物を運ぶ光景を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。

ちなみに、オートファジーが運ぶのはゴミだけではありません。詳しいことは『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA)でお伝えしています。

では、具体的に何をどう食べれば良いのか

最近は書籍やテレビでも「老けない食品」のように何かに役立つ食品の特集が目立ちます。ただ、特定の食品を食べれば健康になったり、若々しさを保ったりできるわけではありません。食品の働きを生かしきるためには、体が生きていくために必要な栄養素や成分がしっかり足りていなければいけません。

私たちの体は、栄養素やさまざまな成分を食事として食べ、生きるために必要な生化学反応を支えています。そして、食事として食べる栄養素や成分は多すぎても、少なすぎてもよくありません。そのためには、ちょうどよい量の栄養素や成分をとることができる「土台」をまずつくらなければいけません。

毎日の食事をしっかりとっていれば、病気にも肥満にもなりにくい土台ができます。土台があれば加齢にあわせて調整することは難しくありません。

毎日の食事をバランスよく食べる方法を知り、実践しましょう。

①納豆

オートファジーを活性化する成分:スペルミジン

納豆に含まれる栄養素は、たんぱく質、食物繊維のほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラルが豊富です。ビタミンKが非常に多く、ビタミンB1・B2・B6、ナイアシン、葉酸も含まれています。

また、納豆には、納豆菌から作り出される酵素が含まれていますが、その中のひとつにナットウキナーゼがあります。ナットウキナーゼは、血栓溶解作用があります。ナットウキナーゼは、長時間加熱すると酵素活性が失われますが、一般的な調理法で食べる分には、あまり気にする必要はないでしょう。