オートファジーとは、細胞の働きのひとつ

極端な方法はわかりやすく簡単に取り組めるので注目を集めがちですが、専門家の視点からするとエビデンス(証拠)が明確でないものも少なくありません。生物学的にも栄養学的にもマイナスの側面もあります。

オートファジーは、ダイエット法でも断食法でもありません。人間を健康に保つ、細胞の働きのひとつです。そして今、生活習慣病や認知症、感染症、腎症、心臓病、肺炎などの炎症の改善と深くかかわることがわかってきています。

また、免疫を高めて健康寿命を延ばす効果や美容との関係でシミ、シワ防止に役立てる研究も進んでいます。その働きは食生活や生活習慣の改善で高められます。

本稿では、オートファジーを高める食品や食べ方を示していきますが、まず、オートファジーとは何なのか、どのような効果があるのかについてもう少し見ていきましょう。みなさんの健康意識を大きく変えることになるはずです。

細胞には「道路」や「リサイクル工場」がある

人間は何からできていますか? と聞かれたらみなさんはなんと答えますか。

おそらく、「皮膚」「骨」「内臓」などの答えを思い浮かべた人が多いでしょう。実はこれらは全て「細胞」からできています。そして、人間は37兆個もの細胞からなります。

その細胞ひとつひとつの中には、多くの物質が存在します。物質がつくる「器官」もあります。エネルギーをつくる器官もあれば、物質を消化する器官もあります。人間の社会のように「道路」もありますし、「リサイクル工場」もあります。

細胞の中の物質が全体のためにひとつひとつ動いています。細胞は何億年も前から、人間社会の物流網より効率的な、非常に秩序だった物流の仕組みを持っているわけです。人間の社会よりもある意味、きっちり動く世界があります。

細胞ひとつひとつが正確に機能しているから、私たちは問題なく日々を過ごせています。つまり、健康とは細胞が正常な状態です。その反対に病気とは細胞に不具合が起こっている状態です。細胞がまともに機能しなくなることで私たちは体調が悪くなり、最終的には死ぬこともあります。

細胞には恒常性という特徴があります。これは体の状態をある一定のレベルに保つ生命の現象です。難しく聞こえるかもしれませんが、恒常性があるから、私たちの体温や体重はある一定の範囲内に収まっています。