「腎臓のバリア」糸球体が壊れている可能性がある

それに対して、「尿たんぱく」の項目はどうでしょうか。通常、腎臓の糸球体しきゅうたいという毛細血管は、細胞の材料になる大切なたんぱく質をむやみに外に捨ててしまわないよう、2重のバリアで守っています。それなのに、尿にたんぱく質が出ているということは、この血管が傷んでいる可能性を示唆しています。

糸球体はとてもデリケートな血管の塊で、一度壊れると再生しません。つまり、尿たんぱくが出ているということは、糸球体が壊れている可能性があり、中性脂肪が基準値を超えている場合よりも、ずっと深刻だといえるのです。

そのため、先ほどの血管障害の進行の図でも、中性脂肪は下のほうにありますが、尿たんぱくはそれよりも上にあるのです。

生活習慣の変化は確実に数値に表れる

健康診断の結果を見るときは、前回や前々回の健康診断の値と比べて、現在の自分の状態を判断することも重要です。例えば、血圧やHbA1cが基準値の範囲内であっても、少しずつ上がっている場合は要注意です。

過去のデータとの比較は、現在、体の中で起こっていることが、どのような生活習慣から引き起こされているのかを考える手がかりになります。

野口緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)
野口緑『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)

私は、保健指導の面談で、「去年と比べて中性脂肪が上がっていますが、生活の変化など何か思い当たることはありますか?」などと問いかけて、宝探しみたいに生活習慣の変化を一緒に振り返ってみる、ということをやってきました。すると、「ああ、そういえば……」と、日頃気にも留めずに何気なく繰り返していた習慣に気づいたりするのです。

例えば、体重が増えた原因が、「娘が学校を卒業してお弁当を作らなくてよくなったので、自分のお昼ご飯も弁当から外食になった」とか、「職場が3階から6階に移って階段を使わなくなった」ということだと気が付くこともあります。

原因がわかれば、対策も取りやすいですよね。

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