※本稿は、池谷敏郎『完全版 最速で内臓脂肪を落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
血管の老化が引き起こすさまざまなトラブル
血管の老化が引き起こすトラブルにはさまざまあります。
血管は加齢とともに老化しますが、それによって、動脈の血管壁が硬く厚くなって、弾力性を失った状態――これが「動脈硬化」です。
動脈硬化は、加齢に伴う生理的な要因のほか、血液中に「悪玉」といわれるLDLコレステロールや中性脂肪が増えすぎたり、「善玉」といわれるHDLコレステロールが減少することで起こる脂質異常や、高血圧、高血糖、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなど、さまざまな危険因子が重なることで、徐々に進行が始まります。
酸化ストレス(体内で活性酸素が過剰に産生され、それを消去する抗酸化防御機能とのバランスが崩れて酸化に傾いた状態)や、高血圧に伴う圧力などによって、血管壁の内壁を覆う血管内皮細胞が傷つきます。
血管内皮細胞は、血液と血管壁の間を隔てるバリアの役割をしているため、そのダメージによって血中のLDLコレステロールなどが血管壁内へと侵入します。
血管事故を引き起こす「天敵」
このLDLコレステロールが酸化されると異物(酸化LDL)となり、免疫細胞であるマクロファージに取り込まれて血管壁に蓄積されます。このようにして血管壁に柔らかい脂質を含んだ瘤(プラーク)が生じ、粥状動脈硬化が始まります。
プラークは血圧上昇などの刺激によって傷つきやすく、傷ついた部分には血栓(血の塊)ができます。そして、血栓は、瞬く間に大きくなって血管内腔を詰まらせたり、一部がちぎれて流され、より末梢の血管を閉塞してしまうことがあります。
厳密には「動脈硬化」にもいくつかの種類がありますが、心臓や脳などの太い動脈で起りやすく、血管事故につながるのが、この「粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)」で、一般に動脈硬化という場合は、この病態を指していることがほとんどです。