「フードファディズム」のおかしさ

この牛乳の件のように、特定の食べ物が健康によいとか悪いとか、病気に効果があるなどと過大評価をすることを「フードファディズム」と呼びます。例えば、今までにテレビ番組や一般書を通して「これを食べると健康によい」とされた食品には、りんごや納豆、ココアなどがありますね。逆に「これは意外にも健康に悪い」というマイナス面が誇張されがちなのが牛乳です。他にも上白糖、小麦粉、白米などの白色の食品は「白い悪魔」とまで呼ばれて敵視されることがありますが、どれも危険なものではありません。むしろ精製してあるということは、目的以外のものを意図せず摂ってしまうことがないため、雑味がなくて安全性が高く、消化・吸収されやすいという利点があります。

そもそもヒトは草食動物でも肉食動物でもなく、雑食動物です。草食動物のように動物性食品をとらなくても、肉食動物のように野菜を一切とらなくても、とりあえず生きてはいけます。でも、健康で長生きすることは難しいでしょう。先日、TikTokやInstagramでフォロワーが数万人いるロシアのヴィーガン女性が亡くなったことが報道されました。数年間、動物性食品どころか水も飲まず、果物と野菜ジュースしかとらなかったそうで、亡くなったときは39歳だといわれています。栄養が大変偏っていたことが、死亡の一因だったと考えられます。

大人でもそうですが、まして成長期にある子供には、さまざまな栄養が必要です。牛乳や乳製品は、良質なたんぱく質とカルシウムが手軽に摂れる食品なので、乳アレルギーや乳糖不耐症でなければ避けるべきではないでしょう。

牛乳
写真=iStock.com/seanrmcdermid
※写真はイメージです

SNSの情報は信頼度が低い

また、食べ物に関する情報源としてInstagram、YouTube、TikTok、FacebookなどのSNSを利用することは、おすすめできません。

「○○は体によい」という情報よりも「○○は健康に悪くて危険だ」という情報のほうが、人々の注目を集めやすいものです。そして真偽は二の次で「誰かに伝えなくては」という善意から拡散されやすいという特徴があります。SNSで閲覧数を伸ばして評価を受けるには、「○○は危険」と煽るのが一番手っ取り早いのですね。給食で出てくるような身近な食品ほど、意外性があっていいのでしょう。ですから、どうしても極端で不正確な情報が多くなるのです。

特に子供の食事に関しては、確かな資料を情報源にしましょう。あまり熱心に読む人はいないのですが、母子手帳には基本的で大切なことが書いてあります。他にも、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」、農林水産省の「子供の食育」、消費者庁の「食品安全総合情報サイト」がおすすめです。特におかしなウワサの多い牛乳に関しては、Jミルクの「牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!」が参考になるでしょう。ぜひ一度、目を通してみてくださいね。

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