トヨタ、富士通にみる日本的な企業育成法

監査・監督委員会のもう1つの問題は、それがうまく機能しない可能性が大きいことである、実質的な機能に関しては、監査役会の制度よりも劣っている。この理由は2つある。1つは監査・監督委員会が社外取締役のみから構成されていることである。監査役会は、社外の監査役が多数を占めるとはいえ、社内出身の監査役も含んでいる。社内の監査役は、土地勘があるために、会社の中のどこに問題が潜在しているかに気付くことができる。しかも社内監査役も調査権を持っている。監査・監督委員会がうまく機能しないと考えられる第二の理由は、監査担当の取締役が取締役会の決定に参加していることからくる。このような制度のもとでは、取締役会に起因する不祥事を抑えることは難しい。オリンパスの事件では、社外監査役が積極的に関与していたと報道されている。これは、監査役は重要な意思決定に参画せず、その執行に関与しないという監査の基本原則に反している。今回の監査・監督委員会は、取締役でもあるため、自らが参画した意思決定を監査するという奇妙な活動をしなければならない。上でも述べたように、現在の監査役には議決権はないが、大きな牽制力を持っている。取締役としての地位を与える必要はない。

今回の改正のもう1つの柱になっているのは、親会社の株主による子会社取締役への代表訴訟が提起できるようになったことである。これは、子会社を使って不正が行われた大王製紙事件への反省から改正された制度であろう。この制度は、子会社での不正を防ぐという効果があるが、子会社の経営者を萎縮させてしまうという逆効果もある。

日本企業がリスクに挑戦する重要な手段となっているのは、子会社上場という手段だ。リスクのある新規事業を子会社で手掛け、それがある程度成長してくると、上場し、徐々に自律性を高めていくという事業育成の方法である。トヨタ自動車、富士フイルム、富士通、ファナック、積水ハウスなどの優良企業は、上場子会社から成長してきた。子会社上場は日本的な企業育成法である。このような子会社が成長すると親会社の過半数支配から抜け出るときがくる。これは親会社の株主から見ると、株主の利益に反していると見られるかもしれない。多重訴訟の制度が強化されてしまうと、このような積極的自律の決定に制約が課せられる。

法律の改正は、法律の専門家を主たるメンバーとする審議会で原案がつくられる。その結論を公表し、パブリックコメントを聴取し、議会で決定するという手順になっている。そこで支配的なのは法律のプロたちのモノの見方である。会社法は、会社をめぐる利害関係者の利害の調整と、株主の利益の擁護である。しかし、それは、企業の発展を阻害してしまう危険もある。イギリスのように株主の利益は守られたが、企業は発展しなくなったということにならないことを祈っている。企業を成長・発展させる条件を整えることも会社法の任務であるということも忘れないでほしい。そのような法律は、国民経済に発展をもたらすし、株主の長期的な利益にもなるはずだ。

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