「積読」は合理的な行為である

――とにかく大切なことは、買って積読すること

自分の興味関心について、色々他の人に話していると、読書好きの友人が面白そうな本を紹介してくれることも多いです。読書家の友人に薦められたものは、ほぼその場でポチッとして買って積んでおきます。あとで読んでみた結果、本当に良書だったことがほとんどなのと、その良書についてあとでそれらの読書家の友人と意見交換でき、深い示唆を得られるからです。

気鋭の書評家の永田希氏の『積読こそが完全な読書術である』は今の書籍と読書をめぐる環境を冷静に分析し、どうすれば良いかについて解説した良い本です。今の時代、読みきれていなくても後ろめたさを感じずに本をまず買って「積読する」という行為が、いかに合理的で必要なことかを説いてくれています。

まずは良い「ガイドブック」を見つける

永田氏が説くのは、まず、①多くの情報がフローとして供給されてくる時代、どうしても結果として「読みたい」「観たい」「体験したい」気持ちだけが積まれていく状況をやむを得ない現状として認めることです。

安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)
安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)

次に、②自分自身の知の生態系を自律的に整えていくための「ビオトープ(生態系)的積読環境」を構築する考え方です。要するに、順番に買った本を読み切ってから次の本に行くのではなく、とりあえず興味を持った本を買って積んでいって、まず自分のための文化資本を蓄積することが、情報濁流に押し流されないためにも大切だと永田氏は説いているわけです。

書評家でもある氏は積読の妥当性について説くと同時に、読書について考えるに当たって私が参考にした、『本を読む本』(アドラー)、『読書について』(ショウペンハウエル)などの本の要旨も紹介してくれています。そういう意味では、この本は私が「知的生産における読書モードの役割」について考えるに当たって最適な“ガイドブック”になりました。時間がなく指導教官もいないビジネスパーソンの独学においては、まずは良い“ガイドブック”を見つけることが大切です。

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