自分でコントロールできないことは諦める

これは、恋愛で考えると腹落ちするかもしれません。たとえば、あなたが好きになった女性がいたとします。でも、その人もあなたを好きになって相思相愛になるとは限らないわけです。

女性に好かれようとベストを尽くすことはできますが、相手が自分を好きになるかはコントロールできない。好きになってくれればラッキーだし、なってくれなければ仕方がないと諦めるしかない。そう考えれば、かなり気持ちが楽になるはずです。

私は、こうしたマインドチェンジをしてからは、人間関係に限らず、どのようなことでも気持ちが楽になりました。脳科学の観点からみても、自分ができることとできないこととの仕分けがはっきりしていれば、脳のモビリティを高めやすくなるのです。

ストレスをためる人とためない人の違い

これは、脳の主体性に関わっているのですが、言い換えるならば、「脳はこのようなことをすると、このような効果がある」というフィードバックで自分の主体性を捉えています。このような考えのもと、自分がコントロールできないところまで主体性を伸ばしてしまうと思い通りに物事が運ばないので、それがストレスの原因になっていることが多いのです。

茂木健一郎『運動脳の鍛え方』(リベラル社)
茂木健一郎『運動脳の鍛え方』(リベラル社)

私の周囲の人たちを観察してみても、ストレスを溜めている人は、自分でコントロールできることと、できないこととの仕分けに失敗している人が多いと感じます。

たとえば、ビジネスの場面においても自分が取引しているクライアントに対して、いくら素晴らしい提案をしても、取引先の人の言動やジャッジはコントロールできません。それをいくらコントロールしようとしても、それはストレスになってしまうだけなのです。

自分がコントロールできることについてはベストを尽くし、コントロールできないことについては潔く諦める。このような仕分けさえできていれば、ストレスは大幅に軽減できるというのが、私が考える脳科学的ストレス撃退法なのです。

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