脳科学的な効用

こうしたセレンディピティは、車や自転車などの乗り物で移動するだけではなかなか出会うことができないものです。なぜなら、つい見落としてしまいがちなその土地の魅力を、ランニングという速度だからこそ拾い上げることができるからです。

このように、決まったルートもなければ、自由気ままで堅苦しいルールもないのが旅ランの魅力であり、10人いれば10通りの旅ランがそこにあります。

もちろん、脳科学的な観点からも、旅ランは脳のモビリティを高めてくれますし、ストレス解消という観点からもおすすめです。また旅ランは、景色の変わらないルームランナーやトレーニング的なランニングとは異なり、楽しく走ることができるので、疲労感が少なく、身体的なストレスを感じづらくなるというメリットもあります。

さらに、朝の時間帯に旅ランをすれば一石二鳥。先に述べたとおり、太陽の光を浴びることでセロトニンが出やすくなりますし、走ることで快感を得られるためドーパミンも放出されるからです。旅を楽しみながら走る旅ラン、ぜひ実践してみてはいかがでしょうか。

私が陥ったストレスの悪循環

実をいえば、ストレスについては私にも苦い経験があります。

30歳くらいまでは人間関係を構築することが苦手でした。そのせいで知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまっていたのです。あるとき、健康診断でお医者さんに心臓の音がおかしいといわれたことがありました。ところが精密検査を受けると、特に異常はありません。

お医者さんが首をひねって、「君、ストレスを溜めやすい性格なんじゃないの?」といったことをいまでも覚えています。そもそも、人間関係とは大抵思うようにはいかないもの。そんなときに、自分が本来コントロールできないことまでコントロールしようとすると、どうしてもストレスが溜まってしまいます。

自分が直接どうこうできないことなのだから、諦めればいいのに、なかなかそれができない……。結果として、さらにストレスを溜め込むという悪循環に陥ってしまっていたのです。

残業
写真=iStock.com/shironosov
※写真はイメージです

そこで私は、次のようにマインドチェンジすることにしたのです。

「自分で努力すれば何とかコントロールできることと、どう頑張ってもコントロールできないことを仕分けする。前者についてはベストを尽くす。後者については潔く諦めればいい」