最先端で現状維持
「現状維持、それで十分です」
将来のことを尋ねると、拍子抜けするほど力の抜けた回答が返ってきた。しかし、江南さんにとっての現状維持は、トップランナーであり続けるという意味だ。
「マーマレードでは毎年金賞を取り続け、リーディングし続けたい。今はアドバンテージがありますが、儲けを考え手を広げ始めたらすぐ追いつかれてしまいます。だからマーマレードは農園のブランディングとして儲けを追及せず、収入は本業のみかん農家と会社勤めの両輪で得ていきたい。自分に声を掛け、必要としてくれた方のためにも、自分の経験や知識を惜しみなく注いで会社に貢献しなければなりません。朝、山に行って身体をつかって、午後、仕事で頭を使って、夜は好きなマーマレード作りができる。自分の頭も身体も全部、世の中のために役立てられるんです。毎日充実して、夜もぐっすり眠れますよ」
ワイシャツの白さが際立っていた
インタビューを終え、江南さんはそそくさとマーマレードを片付け始める。あと30分で出社しなければならないらしい。
真っ白なワイシャツからは、サラリーマンらしくない日に焼けた腕と首筋がのぞいている。振り向いた笑顔も同じくらい焼けていて、ワイシャツの白をさらに際立たせていた。