次第に、マーマレードを気に入ってよく買ってくれる人たちから「次はこの品種で作ってほしい」とさまざまなリクエストが寄せられるようになった。江南さんはその品種を取り寄せてみて、うまくマーマレードとマッチすると感じると、自分の畑で栽培することにした。
「たちばな、すだち、レモン、じゃばら、へべす、だいだい、ベルガモットもそうですね。これらの品種は香酸柑橘といって、原種に近いので酸っぱいのですが香りが高い。それに、生命力が強いのでみかんより育てやすいんです」
そして、ある顧客の言葉が、江南さんのマーマレードを世界一にのし上げていくことになる。
「こんなにおいしいなら、世界大会に出してみたら?」
7年連続で金賞受賞、うち2回は最高金賞
イギリスで毎年開かれる「ダルメインマーマレードアワード」。世界中から3000点以上が出品され、そのなかで金賞に選ばれるのは50点、さらに3点が最高金賞である「ダブルゴールド」を受賞する。
直売所の顧客からその情報を耳にし、腕試しのつもりで出品してみることにした。2017年のことだった。
「そしたらなんと、初出場で金賞を受賞したんです。そのときに出したのがこの、グリーンレモンです」
透明感のある美しい緑のマーマレード。その瓶には「2021年金賞」のラベルが貼ってある。聞くと、ラベルは3年間しか貼れず、2021年に再度金賞を受賞して今のラベルを貼っているそう。
2017年当時、まだ賞レースは開催国であるイギリスのものが席巻していた。しかし、世界各国3000本以上のマーマレードの中から、江南さんは初出場ながら金賞に選ばれたのだ。
「課長が世界で賞取ったんだってよ!」
その頃はまだ会社員だったため、職場でも金賞受賞の話題は広がった。
「ほかに金賞を受賞した方はみんな、有名なマーマレード職人ばかり。世界を狙うのならば、会社を辞めて専業農家になり、本気で挑戦してみようと思いました」