異次元緩和が結果的に中国を膨張させた
図表4は以上のカネの流れを表している。即ち、異次元金融緩和の起点である2012年末に比べた日銀による資金発行と日本の対外金融債権、中国人民銀行資金発行及び中国の対外金融債務の増加の推移を追っている。
日銀資金発行と日本の対外金融資産が同時並行して増え、しかも2015年から2021年までは絶対額がかなり接近しているのには驚かされる。他方、中国の対外金融債務増加トレンドは人民銀行資金発行ばかりでなく、日本の対外金融資産の増加トレンドにも沿っている。
総じて、日銀がカネを刷れば、中国が対外債務を増やし、人民元資金を増発できる。この結果、中国は信用創造を通じて現預金を膨張させられる。中国による日本買いは日銀異次元緩和が元凶とはいえないが、まったくの無関係では済まされない。
中国の日本買いを止めるには脱デフレが必要
重要なポイントは、日本がデフレから抜けだせないことにある。とくに問題なのは、異次元緩和の効果を減殺する緊縮財政である。「異次元緩和を止めよ」と論じるつもりは毛頭ない。ただ、岸田文雄政権が財務省主導で進める増税と財政均衡化路線に乗る限り、日銀政策の効果は極めて限られ、脱デフレは実現しそうにないというのが、これまで10年もの異次元緩和の教訓なのだ。
中国の日本国土買いは安全保障上の脅威になり得る。規制強化と同時に、財政と金融両面から脱デフレ達成を急がないと、チャイナマネーにつけ込まれつづけるだろう。