中国人がショッピング感覚で日本の島を買う時代に

北海道の広大なリゾートや原野が買い占められるのも、地方経済の疲弊と密接な関係がある。全国各地の宿泊、観光業界は中国の団体客のインバウンド消費再開を心待ちにしている。屋那覇島の買い手は山東省青島チンタオ出身、金融業や不動産業を営む34歳の女性だという。中国ではとくに目立たない風情の主婦がショッピング感覚で日本の離島を買うケースは今後当たり前になるやも知れぬ。

それにしても、なぜやすやすと、日本が中国のマネーパワーに吞み込まれそうになるのか。それは、日本の慢性デフレとグローバル金融の流れが大いに関係がある。

デフレ経済では需要の萎縮のために物価や賃金が上がらない。需要を増やすための近道は実体経済を刺激する財政支出を拡大させることだが、政府は消費税増税と財政支出削減による緊縮財政路線をとりつづけてきた。

国内需要が伸びず、日銀の資金は海外へ

2012年12月に始まったアベノミクスは脱デフレを目指したが、その役割はもっぱら日銀の異次元金融緩和政策に任された。日銀が巨額の資金を発行して、0%以下の資金を市中金融機関に供給する。市中銀行がその資金を融資に回せば、生産や設備投資が活発化する結果、需要が増えるという好循環を企図したのだが、そういかなかった。消費税増税など緊縮財政の影響で需要が増えなかったためだ。

増発される日銀資金は国内での資金需要不足のため基軸通貨ドルが支配する国際金融市場に流れでる。さまざまな国の金融機関や企業が国際金融市場で資金調達するが、なかでも高めの成長が続く中国が大口の借り手となる。米欧の投資ファンドなど金融資本は対中投融資に血道を上げる。

中国の中央銀行である中国人民銀行は人民元資金を発行して流入するドルを買いあげる。国有商業銀行などは人民元資金を融資し、国内の生産や不動産開発など固定資産投資を活発にする。結果、カネは商業銀行預金となって還流する。貸し出しが新たな預金を生む信用創造が現預金を膨張させるのだ。