面接時の評価と採用後パフォーマンス「相関関係なし」

採用学』(新潮新書)の著書である服部泰宏・神戸大学大学院教授が、面接時の評価と採用後の優秀さ(パフォーマンス)について、10社以上の企業の人事データを分析したところ相関関係がなかったと、著書で述べている。

服部泰宏『採用学』(新潮新書)
服部泰宏『採用学』(新潮新書)

それほど能力の見極めが難しいのに、ましてや学生が面接会場に入ってきた瞬間に善しあしがわかるものなのか。

いとも簡単に見極められると言ってのけた昭和の人事部長たちに「なぜわかるのか」と聞いたら、「長年の採用経験から得た直感だ」と異口同音に語っていた。

直感と言われれば、こちらも口を閉じるしかない。では直感で採用したその大企業が成長著しいかといえば、バブル崩壊後に業績低迷で大量のリストラを実施したり、同業他社と合併し、元の名前が消えてなくなったりした企業もある。個人の力で会社全体を動かせないだろうが、直観採用の人材が埋もれた可能性も高い。

今にして思えば「部屋に入った瞬間、優秀かどうかがわかる」というのは、都市伝説の類いであり、日本企業の採用の前近代性を物語るものでしかないだろう。

仮に、部屋に入った瞬間の学生を視覚的に判断する材料としては、顔や服装、動作ぐらいだろう。服装は皆同じリクルートスーツなので顔と動作であるが、まさか顔(ルックス)で判断する人事担当者はいないだろう。

残るのは動作であるが、一般的に対面での面接は、控え室で待機し、人事に案内されて、会場の部屋のドアをコンコンとノックして「失礼します」と言って入る。実はこの瞬間が極度に緊張する。

緊張ゆえに身震いし、目が点になったり、所作がぎこちなくなったりする人も少なくない。複数の面接官の前に座っても緊張が解けず、難しい質問を投げかけられてもまともに受け答えができない人もいる。

その結果、落とされる人もいるが、もしかしたら企業の中には、緊張に耐えられるのかというストレス耐性を見ているのかもしれない。

前澤氏を含む学生が部屋に入った瞬間に「採用かダメ」の判断をする手法も、同じようにストレス耐性で判断している可能性もある。

ただし、こうした採用戦術は今ではナンセンスと言ってもよい。学生の中には早期に就活を開始する人もいれば、皆より遅れて開始する人もいる。早期に開始した学生ほど面接の場数を踏み、就活経験が豊富なので面接での良い評価を得やすい傾向があるといわれる。

しかし就活に熱心で場慣れしているから、入社後に活躍するとは限らない。つまり、面接時の緊張度やストレス耐性で合否を判断するのは意味がないということだ。