「夏のボーナスが過去最高」との報道があったが、それは本当なのか。ジャーナリストの溝上憲文さんは「上場企業の2023年3月期の決算は最高益だったが、儲かった分はボーナスで社員に反映されていない。今春の賃上げでは大盤振る舞いしたように見えるが、ボーナスは低く抑えたいという“渋ちん”ぶりを証明した」という――。
同じビジネスマンが複数乗っている電車
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22年夏は前年比11.29%増、今夏は前年比2.6%増と小幅

「夏のボーナス最高89.4万円」。7月18日の日本経済新聞の1面トップにこんな見出しが躍った。上場企業を中心に406社を調査し、2年連続で過去最高(平均額)を更新したそうだ。

今春闘では大手企業の満額回答が相次ぎ、30年ぶりの大幅賃上げが注目された。それがボーナスにも波及しているのかと思いきや、よく見ると実はそうではない。

22年夏は前年比11.29%増だったが、今年の夏は前年比2.6%増と小幅な伸びにすぎない。

今春の賃上げ率が労働組合の連合の最終集計で従業員1000人以上の企業で3.69%、全体平均で3.58%増だったが、それすらも下回っている。

連合が集計した一時金(ボーナス)交渉でも、妥結した平均月数は昨年同期と同じ4.87カ月。金額ベースで約2万8000円増えているが、賃上げで基本給が上がった分が反映されているだけで、いくらも増えていない。

上場企業の2023年3月期の決算は円安効果も加わり、純利益は前期比1%増と2期連続の最高益となった。本来、儲かった分は毎月の給与ではなく、ボーナスで社員に還元するのがこれまでの倣いだったはずだ。にもかかわらず儲けの分はボーナスに反映されていない。

結局、急激な物価上昇への対応として賃上げでは大盤振る舞いしたように見えるが、ボーナスは低く抑えたいという“渋ちん”ぶりを証明したことになる。この事実に気づいていた人々からは「やっぱり、ウチの会社を含め日本の企業はすごくケチ」といった辛辣しんらつな声も聞かれる。

大企業以上にもっと深刻なのが中小企業だ。