「ストレートなもの言い」を成功させる方法
Q 上司にズバリ、ものを言えません。どうすればいいでしょうか?
先輩社員のなかに、必要とあらば誰に対してもストレートに進言できるすごい人がいます。忖度なしで斬り込んで本質を突き、後腐れを残さない。相手がキレッキレのエリート上司であろうと、いるだけで周囲を萎縮させる怖い役員であろうと関係ナシです。でも、悪い印象も残らない。なぜそんなことができるのか、不思議です。私はそんなことはできないのですが、どうすればいいのでしょうか。
A ストレートなもの言いを支える「説明力」「人間関係構築力」「アンテナ力」
人間関係を破綻させることなく、上司にズバリものが言える先輩が身近にいるとは、ラッキーですね! その先輩のどこがすごいのか、分析してみましょう。
まず、「進言すべきは今だ」というポイントを見極める判断力や即実行に移す瞬発力、そしてそれを支える話術、これらを備えていてこそストレートなもの言いは可能になります。
でもそれだけでは、進言はできたとしても、そこまでで終わってしまう。進言の結果として組織を動かすには、周囲を「なるほどその通りだ」と腹落ちさせる「説明力」や、直球を核心に投げ込んでも後腐れを残さない「人間関係構築力」などが欠かせません。図表1をご覧ください。実は「ストレートなもの言い」を成功させるには、図に示したような4層のコミュニケーション能力が求められます。
言論活動のベースになっている「教養」
ストレートな物言いを直下で支えるのが、「説明力」、つまり要約力です。ファシリテーターを務めるときや状況報告書を書くときに、欠かせない力です。
その下が「人間関係構築力」です。挨拶や雑談、トイレですれ違ったときに交わす「お疲れ様です」というやり取りなどの日常的なコミュニケーション、自分とは異なる価値観の存在を認めつつ自分の価値観を柔軟にアップデートし続けること、あるいは、上司の朝令暮改な言動をも許容できる曖昧への耐性とでもいうべきもの……これらが人間関係を構築する力となって、「説明力」を下支えするのです。
そして、これらすべての土台となるのが一番下の「アンテナ力」です。意外とできていない人も多いのではないでしょうか。歴史、地理、政治、経済、国際情勢、文化へのアンテナ……教養という言葉で言い換えてもいいかもしれません。日本はどうなる? 社会はどう動く? この会社は? あの人の将来は? ……世の中にアンテナを立て、状況を正しく察知する力、これが議論、言論活動のすべてのベースになっていることをお忘れなく。
ご質問に戻りますね。上司にズバリもの申すあなたの尊敬するすごい先輩が持っているのは、「魔法の杖」ではなく、深い教養と人間関係を構築する力、そして、それらをベースにした説明力、なのです。
教養をないがしろにする人には生産性の高い議論はできない