「親からご飯作ってもらったことないやん」

その後も、高校にも行かず、いくつもの紆余曲折がありました。家に帰ってこなくなったり、年齢をごまかして夜の仕事をしたり……。

そんなこんなのうちに、17歳の時に付き合っていた男性との間に子どもができて、母親になりました。

結婚した相手とはうまくいかずに、すぐ離婚してしまったのですが、シングルマザーになって離乳食が始まるくらいの頃に、彼女から電話がかかってきました。

何の用かと耳を傾けると、「堀井さん。私、親からご飯作ってもらったことないやん」と言います。確かに、コンビニに親のご飯を買いに行っていたくらいですから。それは理解できました。

コンビニに親のご飯を買いに行っていた(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Vorawich-Boonseng
コンビニに親のご飯を買いに行っていた(※写真はイメージです)

「子どもにちゃんとあたたかいご飯を食べさせたい」

そして、こう続けます。「施設はあったかいご飯がでてきたやん。今、子どもの離乳食が始まったんやけど、私、あんなふうに子どもにちゃんとあたたかいご飯を食べさせたい。だけど作り方が分からなくて、作っても子どもが全然食べてくれん」と言うのです。

彼女は、施設には2年間いました。あんなに嫌がっていた施設だけど、温かいご飯を食べた経験がこの子の中にしっかり息づいていたんだということが分かり、嬉しくなりました。

ただし、その頃の施設は調理師さんが調理室で作ったものが出てきていたので、作るところは見ていません(今は、この点も改善されていると聞いています)。

とにかく美和は、料理を作るところも見たことがないし、人と一緒に作った経験も浅かったのです。でも子どもが生まれてご飯が必要になり、自分は自分のお母さんみたいにはなりたくない、子どもには自分で作った料理を食べさせたいと思ったのだそうです。