移民政策は「“日本モデル”を手本にすべし」
結党10年で絶好調のAfDが、欧州議会にかける期待は大きい。EUでは従来より保守政党が政権を握っているハンガリーやポーランドだけでなく、イタリア、スウェーデン、オーストリアなどにも次々と右派の政権が成立しているため、ドイツ国内とは違って、AfDが異端として差別されることも少ない。AfDは当初、EU脱退を主張していたが、現在はEUの改革をモットーに掲げ、少なくとも35人の候補者を立てる予定だ。
ちなみにAfDは欧州議会では、フランスの国民連合や、イタリアのLega、オーストリアのFPÖなどと共に、ID(アイデンティティーと民主主義)という右派の会派に属している。
目下のところAfDは、EUでもドイツでも、与党になる気満々なので、その政策案は外交から安全保障、財政、教育、エネルギー政策など、すべての分野を包括しており、内容もしっかりした現実的なものになっている。
例えばウクライナ戦争に関しては、ロシアへの経済制裁はドイツの弱体化に資するだけなので一刻も早く終了し、対話による停戦を積極的に進めるべきだという主張だ。確かに、ロシアを敵に回したヨーロッパの平和や繁栄などあり得ないと思える。
なお、私にとって意外だったのは、日本が難民受け入れを制限しているとして、“日本モデル”を手本にすべしと言っていることだ。これについては、少々買い被りではないかと感じられて仕方がないが……。
ドイツの前途は荒れ模様である
7月30日には、憲法擁護庁のハルデンヴァンク長官が、AfDが「極右の陰謀論を拡散しようとしている」と指摘する一幕もあった。ドイツには昨今、政府を批判する意見は何でも「陰謀」とする傾向があるので、「またか」という感は否めない。
さて、今後のことである。よほど大きく躓かない限り、AfDが来年の欧州議会選挙で成功を収めることは想定内だ。もし、そこで“異端”の看板が外れれば、25年のドイツの総選挙の行方もかなり流動的になるだろう。
ただ、AfD以外の政党は、現在、すべて没落の一途なので、このままでは、手負いの獣同様、AfD攻撃が何でもアリになっていく可能性は否定できない。それこそさまざまな「陰謀」が蔓延るかもしれない。
いずれにせよ、AfDを駆逐しようとする勢力と、支持する勢力の対立が、ますます熾烈になっていくことだけは間違いがない。ドイツの前途は極めて荒れ模様である。