脱炭素はすでに絵に描いた餅と化しているが…

CDUはこれまでAfDを極右だ、ネオナチだと決めつけ、絶対に連立はしないと公言してきた上、実は、あまりにも左傾してしまっており、今やAfDと組める状態ではない。そこでCDUは、政権を取るなら緑の党が連立相手として必要になると見越し、必死で緑の党に擦り寄っている始末だ。

その緑の党だが、現在、極端に支持を失いつつある政権党3党の中で、なぜか他の2党ほど沈下してはおらず、総選挙時の14.8%が若干下がった程度だ。ただ、実は、ドイツの国益を一番損ねているのが緑の党で、例えば、エネルギー危機の真っ最中に、全方面からの反対を無視してすべての原発を止めてしまうという暴挙に及んだのもこの党だった。

現政権内で分不相応な勢力を奮っている理由も、やはり、社民党も連立相手として緑の党を必要としていることだろう。

その緑の党のおかげで、今、ドイツは電気不足に陥り、連日、外国から高い電気を買い、止めるはずだった石炭と褐炭の発電所まで稼働中だ(何が“脱炭素”なのだか?)。今は夏なので電気消費が少なく、日中は太陽光発電に助けられてどうにかなっているが、今冬の電気供給については何ら保証されていない。

AfDが不満の受け皿になっている

それにもかかわらず緑の党は、電気がなくても国民にガソリン車からEVへの乗り換えや、暖房の電化を強いるという支離滅裂さ。そして、すでに絵に描いた餅と化した“脱炭素の達成”を、未だに聖なる目標として掲げ、それが実現すればドイツに好況が訪れるとうそぶいている。

ただ実際には、産業用電気料金は高止まりのままだし、CO2の排出量に伴う炭素税まで課され、景気は良くなるはずもない。当然の帰結として、競争力を失った産業界が先を争って国外に脱出を図り始めており、雇用が総崩れになることが危惧されている。

しかし、緑の党のコアな支持者というのは、都会に住む裕福なエリート層とその2世、しかも教員や公務員が多く、経済的困窮とは無縁だ。だから、今なおイデオロギー優先で凝り固まっていられる。

したがって緑の党の支持率もそれほど落ちないのだが、ただ、そういう一部のエリートたちに支えられた政党が強権的な政策を強行するのだから、今や国民の多くは、自分たちは犠牲者だと感じている。緑の党の対極にあり、現実的な政策を提唱し続けていたAfDがどんどん支持者を増やし始めたのは、当然の結果である。