海外から戻って、モノの買い方にも変化が

分相応、必要十分に関連した話でいうと、最近、私が実践している「冷蔵庫内のストック管理術」についても付け加えておきたい。

私は2023年2月から5月までの3カ月ほど、タイとラオスで過ごした。日本を離れる前、家の冷蔵庫を空っぽにしたのだが、帰国後も冷蔵庫を満タンにしないことを心がけるようになった。タイやラオスで暮らしてみて、自分に必要なモノが極めて少ないことがよくわかったのだ。スーツケース、リュック、ボストンバッグ、トートバッグがひとつずつ。それだけで3カ月間の生活が成り立ってしまったのだから。

そんな経験をしたこともあり、唐津に戻ってから「余計なモノはいらん。本当にいらん」という考えをさらに強く抱くようになった。こうした志向は、日々のスーパーでの買い物にも活かされるようになる。タイへ行く前は、店で食指がそそられる食材(たとえばXO醤など)を見つけたら、躊躇なく購入していた。だが、それらを使い切ることなく捨ててしまうことも少なくなかった。そこで帰国後、スーパーへ出向く際は「今晩と明朝の食事で必要なモノだけ買う」ことを心がけるようにした。

冷蔵庫を開ける男性の手元
写真=iStock.com/SummerParadive
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すると、コレが思いのほか節約になったのである! 「いつか必要になるかも」「あれば使うかな」程度の食材は購入せず、とにかく喫緊に必要なモノのみを買う方針にしただけで、月に1万5000円程度は節約できるようになった。さらに冷蔵庫内にも余白が生み出され、食材を傷ませてしまった後悔や、「ぜんぶ使い切らなきゃ」というプレッシャーからも解放された。

このような姿勢は、冷蔵庫の食材管理だけでなく人生全般にも影響を与える。「いま必要なものだけを手にする」という方針でこれからも生きていく。さすれば、貯金はさらに増えていくだろう。

苦しんで稼いだ「時給889円」が判断基準に

「臆病な生き方/豪気な生き方」「必要最小限のモノしか持たない/ほしいモノは全部手に入れたい」のどちらが本当に幸せか、というのは私にもわからない。ただ、私にはいつも判断基準にしている、目安のような金額がある。バイト時代の時給だ。大学に入る直前の1993年3月、私は引っ越し屋で1カ月ほど働いたのだが、1日9時間勤務でバイト代は日当8000円だった。時給に直すと889円である。

このバイトは本当につらかった。重い荷物を何個も運ぶことになるので肉体的にキツかったことに加え、毎度一緒にトラックに乗る先輩2人組が、これから大学に入る私のことを「インテリさん」と揶揄するように呼び、現場で罵倒し続けたのである。精神的にもかなり疲弊した。入学までの1カ月間で20日ほど働き、バイト代として16万円を手にした。他にも、引っ越し客からときどきチップをもらうこともあった。それらの報酬は大学生活初期の消費を助けてくれた。だが、同時に「苦痛の対価としての時給889円」という概念を私に強く植え付けたのだ。以降は、この時給を基準に物事の価値をはかり、消費行動を考えるようになった。