「一括査定サイトには悪い業者が入り込む余地がある」

弁護士ドットコムの運営会社取締役の田上嘉一弁護士は「売買時点で通常、責任は買主側に移る」と話す。業者が減額を請求できる時期はいつまでなのか、契約書などで確認する必要があるとも指摘する。たとえば、契約の時点で査定額が決まるが、代金の支払いまでは減額の請求ができる条項が契約に盛り込まれていることもあるという。

田上さんは、消費者が過去の修復歴などを適切に申告していれば、業者側の不当な減額に対して、それなら売らないといえると話す。違約金については、契約書にどのように書かれているかだが、消費者契約法第9条1項は、平均的な損害額を超えるものを無効としている。

日本自動車購入協会への相談事例では、消費者が車の売却を契約した翌日、思い直して解約したケースがある。業者は解約料を請求したが、車と移転登録書類とも引き渡し前で、協会は「実害が発生していると考えにくい」とする。

ディーラーに並ぶ新車
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一方、消費者が売却を契約した後に、他社がそれより高い査定額を示し、消費者の自己都合で最初の業者との契約を解約してトラブルになることがあると、協会は注意喚起している。

契約の早期解約について、田上さんは「売主側の過失がどれだけあったか」と指摘し、契約した翌日の解約で実害が発生していると考えにくいと話す。たとえば、すでに車を引き渡していれば、その返還費用といった実費を消費者が負担するなど、「社会通念上の通常損害」を消費者側が負担することになるという。

中古車の売却でトラブルが絶えない背景には、業者の資格として、都道府県公安委員会から古物商の許可を受けるだけでいいこともある。日本中古自動車販売協会連合会の関係者は、中古車売買について「古物商の許可があれば誰でもできる」と話す。

たとえば、車検は国土交通省が管轄するが、中古車市場を見ていて、監視・監督するところはない。そうした事情が、ビッグモーターのような不適切な行動に走る業者が横行してしまう背景にある。

前出カノラマジャパンの宮尾さんは、ここ2~3年、新車があまり出回らず、中古車価格が上がってきているという。そのうえで、中古車の買取価格が市場実勢と見合うのか、「目利きして判断しないといけない」と査定の難しさを指摘する。

「買取業者が少し高い金額を示すと、消費者は喜ぶ」とも話し、信頼できるディーラーなどと付き合いがあるのであれば、そうしたプロに相談するのがいいと勧める。

消費者にとって、見積もりを簡単にとることができる一括査定サイトは便利だ。日本中古自動車販売協会連合会の関係者は「一括査定サイトには悪い業者が入り込む余地がある」と指摘する。信頼できる業者と付き合いがあれば相談するのがいいとアドバイスする。

くれぐれも見知らぬ業者とは、安易に契約話を進めず、慎重に対応していくことが必要になっている。

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