車売却契約後「査定額50万円下げる、解約なら違約金」
国民生活センターによると、今年7月に相談を受け付けたのは、南関東の50代の女性からで、一括査定サイトの利用者だった。複数サイトで査定額を比較していたところ、そのうちの1社の担当者が女性のところへ来訪し、強引に契約させようとした。他社とも売却話を進めようとしているのなら他社を断ってほしいと、その担当者が女性から携帯電話を借りて断ろうとするなど、強引な対応だった。女性は抵抗し、その担当者をなんとか追い返したという。
国民生活センターには類似の事例が少なくない。強引に契約させられて、自動車を持っていかれたという相談がある。あるいは、業者が居座って帰らないので、やむなく契約したと、相談してきた人もいる。
今年6月に南関東で相談を受け付けた事例は、車を売却するのに複数社で査定し、最高額の300万円を提示した業者に決めた際にトラブルが起きた。査定後に売却の契約をしたが、業者から後日、連絡があった。修復歴が見つかり、査定額が50万円ほど下がると告げられた。そこで契約を解約すると申し出ると、業者から違約金が数十万円になると告げられ、違約金が査定の減額分とほぼ同程度だったと相談してきたという。
国民生活センターには類似の事例で、売却の契約後、すぐに解約を申し出ると高額の解約料を提示されたという相談もある。あるいは、高額な解約料の算出明細が示されないという相談がきている。さらに、業者に過去の修復歴を告げて、2回も査定して決まった売却額が突然、減額されたという相談もあるという。
こんな自動車の売却をめぐる消費者からの相談は、国民生活センターのまとめで増加傾向にある。2018~20年度は1200件前後だったのが、21年度が1519件、22年度は1601件に増えている。23年度も4月1日から7月23日までの受付件数で396件と、前年同期の367件を上回っている。
買取業界の健全化を目指す民間団体の日本自動車購入協会にも、類似の相談がきている。消費者が査定時に、過去の接触事故で修理していると申告し、業者から買取額の提示を受けて契約した。車と移転登録に必要な書類も引き渡した数日後、業者は予想以上の修復歴が見つかり、減額ないし解約すると一方的に告げてきたという。
この事例について、協会は一般論として、「通常の注意を払えば修復歴を発見できるはずで、業者に過失があるといえる。消費者に契約不適合責任を問うことはできない」としている。
業者が査定の見落としを消費者に転嫁し、業者の過失を問わず、契約を解除できるとする条項について、協会は消費者契約法第10条で「消費者の利益を一方的に害する条項は無効になる場合がある」ともいう。協会の担当者は、加盟会員が協会規約に抵触する対応をしていれば「改善勧告を出しており、改善されている」と話す。