ビッグモーターによる自動車保険金の不正請求問題が発覚後、新たな疑惑が次々に表面化する中、自動車の売却をめぐる消費者からの苦情・相談が近年増加していることがわかった。一括査定サイトを利用した人の元へ業者が来訪して強引に契約させようとしたり、契約するまで居座ったりといった事案が頻発している。ジャーナリストの浅井秀樹さんが現場を取材した――。
駐車場に並んで駐車されている車
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ビッグモーターだけじゃない中古車業者に苦情殺到

中古車販売大手のビッグモーターによる自動車保険金の不正請求問題が発覚し、そのほかにも疑惑が次々に表面化している。一方、消費者が車を売却する際、買取業者とのトラブルも増えている。中古車市場をめぐり、どんな問題があるのだろうか。

自動車の生産は世界的な半導体不足などもあり、新型コロナ感染症の流行後に落ち込んだ。ところが、自動車の需要は衰えず、車を欲しい人が中古車を求めるようになった。「新車需要を補う形で中古車市場が盛り上がった」と指摘するのが自動車調査会社のカノラマジャパンの宮尾健代表。

中古車を扱う業者にとって、買取相場の上昇で取扱単価も上がり、取扱台数が増えて「業績が上がる」と話す。

中古車市場が盛り上がるなか、ビッグモーターではコンプライアンス(法令順守)が機能せず、さまざまな問題が起こったとみられる。宮尾さんは「中古車市場が盛り上がっているときは競争が激化する。市場がいいときだからこそ、売り上げを伸ばすことだけを考える企業風土があったのではないか」と指摘する。

中古車市場をめぐる問題はビッグモーターだけでない。

中古車市場を熟知する複数の関係者から、ビッグモーターのような不適切な業者がほかにもいるという声が聞こえてくる。車を売却する消費者が全国の消費生活センターへ相談する件数が増加傾向にあると、国民生活センターは注意を呼び掛けている。

契約後も一定の期間内なら無条件で解約できる「クーリングオフ」という制度があるが、車は対象外。クーリングオフは訪問販売や電話勧誘などの特定取引が対象で、突然の対応に追われ、判断に余裕のなかった消費者を守るためのものだからだ。一般的に、車の査定を受けて売却の契約をすると、契約書の内容に縛られる。

最近はインターネットのサイトが便利に使えるようになり、自動車の売却に際して必要な情報を入力するだけで査定額が出てくる。こうした「一括査定サイト」の利用は増えており、複数の業者で査定額を比べ、できるだけ高く売ろうとする人が少なくない。