眠れたかどうかより、その日やりたいことができたか

睡眠圧の仕組みがわかると、不眠症への対策も取りやすくなります。

例えば、夜になっても眠くならない日に無理やり就寝すると、ベッドは眠れない場所だと学習されて眠れないことが慢性化します。

眠らずにベッドに入っていることが不眠の要因なのですが、そうはいっても、「なんとしてでも眠りたい」「もしベッドを出たらそのまま朝まで眠れないかもしれない」という不安からなかなかベッドを出られないこともあります。

ベッドで寝ている人
写真=iStock.com/Maria Dorota
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これを睡眠圧の仕組みから捉え直してみます。眠くないならベッドに入らない。それで朝まで眠れなかったら、それは睡眠圧が高まっているということです。

そのまま日中も頑張って眠らずに夜まで過ごせば、ものすごく高まった睡眠圧によって起きていることに耐えられなくなりぐっすり眠ってしまいます。

このように、睡眠圧の仕組みがわかると、その日に何としても眠らなければならないという囚われから離れることができます。

その日眠れたかどうか、ではなく、その日やりたいことがやりたいようにできているかに注目しましょう。やりたいことができていれば、何も毎日必ず眠らなければならないわけではありません。「明日には眠れるだろう」と考えられるようになれば、気分がラクになって眠る前の心拍数も下がりやすくなります。

睡眠圧の仕組みは、不規則な勤務や交代制の勤務でも睡眠を確保するために重要な役割を担います。

睡眠の質の良さを見極める起床後の確認事項

睡眠圧の話は、にお伝えした計画仮眠の話と矛盾するのではないか? と思われた人もいるかもしれません。結局、仮眠はしたほうがいいの? しないほうがいいの? と混乱してしまわないように、仮眠を使うかどうかの判断基準を知っておきましょう。

普段の朝の寝起きを振り返ってみてください。寝起きがある程度スッキリして、眠る前に比べて起きた後のほうが、頭や体がスッキリしているという場合は、睡眠の質が良いというサインです。この場合は、計画仮眠を用いても、夜の睡眠の質には影響がありません。

普段の朝の寝起きが悪い、と感じる人は、睡眠の質を改善することが先決です。計画仮眠よりも先に、睡眠圧を使って夜の睡眠の質を高めてみましょう。

睡眠圧を使えば、睡眠の質が改善します。質の問題が解決したら、睡眠量の問題も解消していきましょう。慢性的な睡眠量の不足は「睡眠負債」という用語で、一般的に知られるようになりました。