二転三転する川勝知事の発言

翌年1月4日の年頭の会見で、記者から自民党との「対決姿勢」を踏まえ、どのような関係を築くのか問われた川勝知事は「自らのペナルティ」に一切触れることなく、その後約1年半にわたり、給与等の全額返上問題があったことさえ無視してしまった。つまり、忘れてしまったのだろう。

そして、当初から疑問を抱いていたNHK記者が7月3日にこの問題を蒸し返した。

NHKの取材に対して、川勝知事は「熟慮した結果、発言に対するけじめは知事として職責を果たすことだと思い至った」などコメントした。驚くことに、給与等の返上はしないことを明らかにしたのだ。

5日の県議会総務委員会で、秘書課長が、このコメントとほぼ同じ発言をした。

5日の総務委員会で川勝知事の“言行不一致”を批判した自民県議(静岡県議会委員会室)
写真=筆者撮影
5日の総務委員会で川勝知事の“言行不一致”を批判した自民県議(静岡県議会委員会室)

ところが、11日の定例会見で、静岡新聞記者から「首尾一貫して返上したいという気持ちはずっと持っていたのか」と問われると、川勝知事は「そういうことです」と回答した上で、「条例案が通らなければ何のためか、それは格好つけているだけになりかねないので」などと釈明した。

つまり、6日前の発言を翻して、今度は給与等返上の条例案を提出する意向を示したのだ。これでは、発言に節操がないと批判されても仕方ない。

川勝知事は今回の県議会で「辞職勧告決議は給与返上を求めるものではないとの意見を踏まえ、返納のための条例案提出を見送った。(5日の)県議会総務委員会で“言行不一致”などの指摘があり、県議会で給与返上の条例案を審議してもらえる環境が整った」などとして、9月県議会に条例案提出を表明した。

総務委員会では、NHKのコメント同様に、秘書課長が「常に県民のために尽くすと発言したことで、(給与等未返上の)けじめをつけた、と(知事から)聞いている」と述べた。それで、自民党県議が「自らが科したペナルティを自らが許すということがあるのか、言行不一致で県民の信頼はありえない」と指摘した。

この“言行不一致”の指摘で、「条例案提出の環境が整った」(川勝知事)ことにはならない。それこそ、川勝知事お得意の詭弁でしかない。約1年半前と同じで、「給与等返上の環境」は整ったわけではない。

「おカネ」の問題は「おカネ」で解決すべき

今回は、言うなれば「おカネ」の話になってしまった。だとしたら、「おカネ」の話は「おカネ」で解決するしかない。

「約440万円」という「おカネ」は庶民には高額だが、川勝知事にとっては大した金額ではないのだろう。1期目は公約に従って、退職手当約4090万円を全額返上した。2期目、3期目は公約していないとして、約4060万円を任期後にそれぞれ受け取った。この辺りも批判を受ける材料だろうが、川勝知事お得意の詭弁でごまかしたのだろう。

自民党県議団は、知事のペナルティが「おカネ」の問題であるならば、4期目の退職手当約4060万円の返上を求めるべきである。川勝知事が勝手にペナルティを決めること自体がおかしいのだ。もともと自民党県議団は、給与、ボーナス全額の約440万円返上で済まないと言っていた。「環境が整った」と言うのは川勝知事だけで、自民党県議団の姿勢はいまも変わっていないはずだ。

川勝知事は給与等返納の条例案提出に当たって、水面下での調整手続きがルールだとも主張している。

となれば、自民党県議団は粛々と退職手当約4060万円の返上を求めればいい。それを飲まなければ、もっともらしいことを言うだけで、川勝知事は「コシヒカリ発言」を本当は反省していないと一般県民でも理解できるはずだ。

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