不信任決議案はパフォーマンスでしかなかった

給与等未返納問題で川勝知事の県議会説明が相変わらず嘘とごまかしに終始した結果、一部の強硬な議員が知事への反発を強め、政局にまで発展した。そのために役員会、議員総会で意見が割れ、もめにもめて深夜まで及んだ。

ただ実際には、もし、不信任決議案が可決されて、川勝知事が失職を選択したとしたら、いちばん困ったのは同案を提出した自民党県議団である。知事辞職を求めたのに、自民党県議団には有力な知事候補者のあてがなかったからだ。

失職した川勝知事が再び立候補し、2021年6月の知事選同様に圧勝したら、自民党県議団執行部の全員が辞職すべき事態に追い込まれた可能性のほうが高い。

自民党県議団にとって、不信任決議案の提出は知事への怒りを表すパフォーマンスでしかなかった。知事与党(18人)への切り崩し工作も通り一遍であり、知事辞職を求めること自体、本気には見えなかった。結果が見えていたのだ。

13日未明に静岡県議会で不信任決議案の投票をする県議ら(静岡県議会本会議場)
写真=筆者撮影
13日未明に静岡県議会で不信任決議案の投票をする県議ら(静岡県議会本会議場)

これまでのリニア問題の取材を踏まえ、今回の問題のように川勝知事に非があることを明らかにして徹底的に追及したとしても、知事へ何らのダメージを与えることさえできないことがわかった。

自民党県議団とのバトルは9月県議会へ…

ただ、今回の場合は事情が大きく違うかもしれない。9月下旬に始まる9月県議会に火種を残したままだからだ。

川勝知事は給与1カ月分と期末手当(ボーナス)の計約440万円の返上のための条例案を提出すると表明した。知事自身が何度も述べたように、担当職員によって条例案提出に向けて、これから自民党県議団らと水面下の根回しや調整が始まる。

県議会最大会派の自民党県議団は今回のような泥縄式の不信任決議案の提案ではなく、ちゃんと準備した上で川勝知事と対峙できるのだ。

今回の給与等未返上問題の不信任決議で、自民党県議団は川勝知事の虚偽説明などを明らかにしたが、一般にはあまりにもわかりにくい。「県民に深くおわびする」という知事発言は、自身の非をわびるのではなく、県議会が深夜にまで及んだことを指すのだろう。だから、多くの県民はこれまで通り、知事への支持を変えていない。それだけ川勝知事は詭弁を弄することに長けている。

本稿では、問題の本質をわかりやすく伝えるとともに、この問題にどのように対応すべきかを提案したい。