新型コロナ、ウクライナ戦争、ChatGPT……。これらの影響を、私たちはどう考えるべきなのか。哲学者の東浩紀さんは「人間は目の前の危機に過剰反応しやすい。知識人や言論人は、そうした社会の過剰反応に対して、別の見方を示すべきなのに、それができなくなっている。これはまずい傾向だ」という――。
哲学者の東浩紀さん
撮影=西田香織
哲学者の東浩紀さん

リベラルと言われる言論人は無抵抗だった

――東さんは6月19日に『観光客の哲学 増補版』(ゲンロン)を出しました。2017年に毎日出版文化賞を受賞した既刊に新章2章2万字を追加されています。さらに今夏には姉妹編となる20万字の新著『訂正可能性の哲学』を刊行予定です。なにが執筆の動機になったのでしょうか。

【東】ここ数年、特に新型コロナとウクライナ戦争を通じて強く思ったことがあります。それは、人々はSNSなどでさまざまに理屈を並べても、何かあればすぐ一方向に流れされてしまうということです。そして知識人、言論人と呼ばれる人たちは、その大きな流れにほとんど抗うことができない。