倉持淳子さんからのアドバイス
人に動いてもらうことの難しさを痛感したのは、前職で東京の営業グループマネージャーになったときでした。それまでは80人のグループで12カ月連続達成記録を樹立するなど、それなりに人をマネジメントできている自信はあったんです。ただ、成果が出せたのは、ずっと一緒にやってきたメンバーが成長したからなんですね。全く育てたことがない問題児ばかりのチームの面倒も見ながら、東京を統括するという現実に、私は直面しました。そして、その問題チームが予算を達成できなかったんですよ。
従来のやり方は、私と一緒に這い上がってきた部下には適切だったかもしれないけれど、本来怠け癖があり、サボることを正当化する能力を高めてきた部下には不適切だということがわかりました。そこで、どんなにダメな部下に対しても、年齢が私よりも上でも、親の気持ちでその一人ひとりの人生に対してコミットする覚悟を決めました。
それまではやる気がない部下、嘘をつく部下には「辞めてくれて結構」というスタンスで、やる気があって素直な部下だけを丁寧に指導するというやり方を取ってきました。でも、やる気がない部下でも育てないといけない状況になったとき、私は考え方を根本から変えたのです。やる気のない部下にいくら方法論を教えても無駄。部下と真剣に向き合い、人生を預かるくらいのつもりで踏み込んで指導していくことにしました。仕事を楽しみ、自分がやれると思ってもらうために、ダメな部下に向き合い、時に褒め、時に怒鳴り、時に涙し、私の本気をぶつけました。あの時期は精神的にも大変で、半年間で体重が20キロも減りました。
ただ、そのおかげで、以前はサボり魔だった部下が自主的に夜遅くまで残って頑張るようになった。人を変えることは容易ではないですが、変わったあとの効果は大きく、逆に仕事が楽になりました。部下の本気に火をつけるまで、いかに自分の時間を投資するかが勝負ですね。