本郷社会部が出雲社長に聞いてみた
質問① 須藤智也くん
バングラデシュの人とのコミュニケーションのとり方は?
出雲さんは、栄養豊富なユーグレナのクッキーをバングラデシュの子供たちに届けるなどの支援を続けています。「自分の名前の読み書きもできない人がいる」とのことでしたが、最初の頃、そういう人たちとどうやってコミュニケーションをとり、信頼を得たのでしょうか。
【A】何度も現場に行って直接話しました
正直に言うと、字が読めない、自分の名前が書けないというのは、それほど大きな問題ではなかったですね。それよりも大変だったのは、文化の違いです。
ユーグレナのクッキーを届け始めたら「すごく栄養価の高いものがあるぞ」っていう噂が、すぐに広がりました。するとどういうことが起きるかというと、盗まれちゃうんです。子供たちの給食のために届けているのに、途中で盗まれて他のところに行ってしまう。
これは、いい、悪いではなく、文化の違いとしか言いようがない。
ある意味、日本は整いすぎていると言ってもいいのかもしれません。災害が起き、避難所に救援物資がなかなか届かないとき、日本人はずっと待っている。発達した物流に慣れているからです。でも、バングラデシュの人から見れば、自分で取りに行けばいいと。そして、途中で取られないように自分で運べばいいじゃないか、と考えるんです。
しかたがないから私は、何度も現地に行って、みんなに話しました。このクッキーは、子供たちに食べさせるためにつくっているんだ。子供たちの栄養状態を良くしたくて日本から来ているんだ。だから盗まないでくれと、一生懸命話しました。
すると盗まれることがピタッとなくなったんですね。話せばわかってくれるんです。
ただしこれを、手紙で伝えようとしたり、誰かに言ってもらおうとしてもだめですね。自分自身で現地の現場を一つずつ回って、直接話さないとだめなんです。そういうことが大切だと学びました。
質問② 江刈内 隼くん
バイオ燃料が事業の主軸になるのですか?
ホームページでユーグレナ社の決算報告書を見ると、2025年頃からはバイオ燃料事業が収益の柱となり、将来的には収益の半分以上を占めるようになるという予想をされていした。どうしてバイオ燃料に舵を切るのですか?
【A】アイデアを広げることも大切です。
最初からそれを狙っていたわけじゃありません。今日もお話ししたように、最初はバングラデシュの栄養不足を解決したいという思いからスタートしました。それは今もまったく変わりません。
ただ、研究をしているうちにいろんなユーグレナが見つかってきました。現在、世界には100種類ぐらいのユーグレナが見つかっています。
その中に油を多く含むユーグレナがいました。本当に偶然です。そしてこの油のクオリティーが非常に高い。いろいろ調べて、これはバイオ燃料の原料に使えるとなって、工場を建設し、現在バイオジェット燃料や次世代バイオディーゼル燃料をつくっています。日本の総理大臣が乗る政府専用機にもこのバイオジェット燃料を使ってもらい、カーボンニュートラル社会の実現に貢献しています。
何か一つ目標をもって取り組むことは大切ですが、あまり決め打ちをするのではなく、どんどんアイデアを広げていくことも大切なんじゃないかと思います。