正直な社員がカッコいいと称賛される

ここから、この戦略を支える企業文化について述べる。キーエンスは付加価値を生むことそのものが企業文化なので、徹底的な合理化志向がある。営業はすべての活動が時間チャージで、「1時間あたりで、どれだけの粗利=付加価値をもたらしたか?」という平均が提示される。

菅野誠二、千葉尚志、松岡泰之、村田真之助、川﨑稔『価格支配力とマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)
菅野誠二、千葉尚志、松岡泰之、村田真之助、川﨑稔『価格支配力とマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)

コンサルティング営業をするのだから、アポなしの無駄な飛び込み営業は禁止。自腹ではありえるようだが、接待も奨励されない。内部監査の仕組みがあり、SFAに嘘のデータ入力がしづらい仕組みもある。

上司は商談、納品後の顧客満足度を確認するために通称「ハッピーコール」をするので、実際の評価がチェックされる。これらから、正直であることが評価され、顧客情報や売り方のベストプラクティスを共有することがカッコいいと賞賛される企業文化になっている。

この、企業文化を醸成するさまざまな「仕事のお作法」の浸透が最大の強みなのだ。

『キーエンス解剖』によれば、平均2183万円(2022年度)で国内メーカー最高レベルの給与体系である。これも「付加価値をあげたら、あげた分だけ社員に分配する」というキーエンスの特長だが、最高の給与を払える企業にしたいというマネジメントの意思の表れだ。

これもまた、真似るのはマネジメントの覚悟がいる(図表1)。

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