「業界初・世界初」商品だから価格を支配できる

戦略の中核は、「①現場主義に徹して顧客インサイトから世界初製品の創造を狙う商品企画力」と、「②ほぼファブレスで商品即納を可能にするSCM」、そして「③技術知識と顧客ソリューションを念頭にコンサルティングセールスをおこなうマーケティング・営業部隊の販売力」の3つだ。これらが同社の強力な価格支配力の源泉である。

一騎当千の開発部隊は、営業からあがってくる「ニーズカード」という顧客の声を活用するが、主にマニアックなリクエストをする顧客(筆者は密かに「変態さん」と呼んでいる)をあぶりだし、ヒアリングに赴く仕組みであるという。また、自分がつながっている顧客の現場と緊密にやり取りして徹底的に顧客理解に努める。

ここからインサイトを得て業界初、世界初狙いの商品開発を狙うが、実際に商品の7割近くは業界初、または世界初である。ゆえに、業界初にして顧客価値が創出できるものであれば、任意にプライシングできるために価格支配力を有する。また、顧客が現場でその商品をいかに活用できるかに重きを置いた「意味的価値」を「機能的価値」よりも重視する。

製品を「即納」して「価格支配力」をビルトインする

製造は基本的にファブレスで、その納入価格は自社粗利80%必達で設定し、商品をデザインする。顧客からの特注品はニーズがあっても決して受注しない。顕在化したニーズに応えるだけでは付加価値が取れないし、他社への横展開ができないからだ。

カタログ製品のすべてを「即納」とする体制は、この業種の他社に類を見ないだろう。センサーや計測器が急に故障して工場ラインを止めたくないような顧客がターゲットだ。ラインを遊ばせたり止めたりしておけば損失が大きく、対応のための即納が必要になった顧客は価格交渉しないことを同社は見越している。つまり、ここに「価格支配力がビルトイン」されているのだ。