アメリカのバイクメーカー「ハーレーダビッドソン」には日本人のファンも多い。経営コンサルタントの菅野誠二さんは「ハーレーがバイク王国の日本で勝ち残れたのは、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキといった性能で勝る日本車と勝負しない道を選んだからだ」という――。
※本稿は、菅野誠二、千葉尚志、松岡泰之、村田真之助、川﨑稔『価格支配力とマーケティング』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
ただの「顧客」→「得意客」→「強力なファン」
顧客の生涯価値を計算してターゲットを選択し、そうやって獲得した顧客を維持したあとには、さらにその関係を「深化」していくことが大切だ。
アメリカの経営学者フィリップ・コトラーによれば、ゼネラルモーターズでは新規の顧客開拓には既存顧客維持の5倍以上の経費がかかることを発見したそうである。また、B2Bビジネスの場合、経費は概算で20倍から50倍にもなる。
では、顧客を自社ブランドの強力なファンにするにはどうすればよいのか。
まず、「見込み客」を対象にして、最初の購買をしていただく「顧客」を創造する。その際には「返報性の原理」を活用することがひとつのアイデアだ。人は、他人から何か嬉しいことをしてもらうと、何かお返しをしなければいけない心理が働く。無料でサンプルをもらう、あるいは価値を感じられる無料メルマガを配信してくれるサービスを受けると、「ここで買わないと悪い気がする」という心理が働く。
小売店では、相手の好みをカウンセリングしてくれ、「これでもか」というくらい商品をテーブルいっぱいに広げて説明してくれるので、元に戻す手間を想像すると返報性が働くのがよい例だ。そのあとには足繁く通う「得意客」になっていただきたい。
しかし、それで顧客深化の道は終わったわけではない。次には「ファン=支持者」として積極的に自社の商品を周囲に勧めてくれるようなレベルから、事業によっては一緒に商品の販売促進のPRに出演してくれるパートナーにまで深化していただく、という理想の到達点まで想定すべきだ。