世界131カ国に広がる「ハーレー愛」

彼・彼女はそのブランドの伝道師となって周囲に口コミしてくれるだけに終わらず、時には協業や共同開発/Co-Creationして、商品企画を手伝ってくれる可能性もある。数的にはトップ20%程度の伝道師が80%の売上に貢献してくれるという例はよくある話だ。ネットでのアフィリエイト(※1)を狙って口コミを広げてくれる宣伝者/アドボケーターになることもある。

周囲にハーレーダビッドソンのオーナーがいたら「ハーレーって、乗っていて、どう?」と聞いてみるとよい。きっと彼、彼女の「ワオ!」体験を飽きるほど聞かせてくれるはずである。

ハーレーダビッドソン
写真=iStock.com/ardasavasciogullari
※写真はイメージです

彼らの多くは「ハーレー・オーナーズ・グループ/HOG」(※2)というファン組織に入会している。HOGは世界131カ国、100万人以上のハーレーオーナーをつなぐ世界最大のライダーズグループである。日本のメンバーは3万人を超え、全国のハーレーダビッドソン・ジャパンの正規販売網115店舗(2020年時点)の地域会員組織を運営している。

統一された店舗デザインはファンの集合拠点、かつシンボルであり、定期的なツーリングやイベントを開催する。これはハーレー体験を共有する、最大のマーケティング施策だ。

(※1)アフィリエイト:成果報酬型広告
(※2)ハーレーオーナーズグループ:https://www.harley-davidson.com/jp/ja/content/hog.html

性能で勝てない日本車とは戦わないと決めた

近年「ファン・マーケティング」「コミュニティ・マーケティング」という概念が広がっている。オンライン+オフラインでコミュニティを生成し、強いファンである既存顧客がブランドを支持し、さらに代弁/アドボカシーすることで、ユーザーがユーザーを呼ぶという考えだが、ハーレーダビッドソンはこの発想の先駆者と言える。

ハーレーは1980年代に、一時期、日本車の攻勢を受けて消滅しかかったことがある。しかしその際、性能では日本車に勝てないことを悟った。そこで徹底的にユーザーペルソナを分析したところ、ハーレーの購入目的、および提供価値の本質は実用性や性能そのものではないことがわかった。それはどこまでも「趣味」であり、「アメリカを強く感じるデザイン」+「力強いエンジン音」+「エンジンの振動」を「楽しむこと」だと見極めた。

この瞬間、日本車と戦わないことを決めたのだ。