心が疲れたときにはどうすればいいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「ストレスの9割は人間関係と言われるが、人間関係を自力で変えることは難しい。そういう時こそ、自分の意志で変えられる生活習慣を見直してほしい」という――。

※本稿は、小林弘幸『自律神経が10割』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

順天堂大学医学部の小林弘幸教授
撮影=川しまゆうこ
出典=『自律神経が10割』(プレジデント社)

疲れの正体は「血流」

「最近、疲れがなかなか取れなくて……」
「体に痛みやだるさがあってつらい」

いま、心身の疲れを訴える人が増えています。ところが、病院に行っても、はっきり病気だと診断されることは多くありません。病気というほどではないけれど、慢性的な不調に悩まされている――。そんな人がとても増えているのです。

医学的な観点では、疲れというのは、基本的に血流障害が原因といえます。しつこい疲れに悩まされるのは、「血流」と「血液の質」の両方が悪くなっているからです。

血流が悪くなるのは、加齢とともに自律神経の働きが低下していくため。交感神経と副交感神経からなる自律神経は、血流や発汗、内臓機能などをコントロールする大事な存在です。

自律神経の働きが低下することで血流が滞り、それが自律神経の乱れを引き起こし、さらに血流が悪くなる……そうして負のスパイラルに陥ってしまうのです。

一方、血液の質は腸内環境と密接に関わっており、腸内環境もまた、加齢とともに環境を整える腸内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増加することで悪化していきます。その結果、血液の質も悪くなっていきます。

そんなダブルの悪影響によって、しつこい疲れがなかなか取れないというわけです。いってみれば「血流疲労」。

では、血流と血液の質を改善するにはどうすればいいのか? 結論は実はとてもシンプルです。

体に働きかけて、「自律神経」と「腸内環境」を整えるのです。

それにより血流と血液の質は改善し、結果としてあなたの免疫力は大幅に高まります。

体全体の免疫細胞の約7割が腸に集中している

腸内環境がよくなれば自律神経が安定し、腸内環境が悪くなれば自律神経もダメになる。それほど、このふたつは密接に連動しています。

とくに、腸内環境は副交感神経の働きに大きく関与しています。交感神経が優位になりがちな現代人が自律神経のバランスを取るには、食事から腸内環境を整えることで、副交感神経の働きを高めるのがもっとも近道です。

ただし、副交感神経ばかりを高めていても、腸内環境が悪化して便秘になってしまいます。肥満の人の多くは、交感神経、副交感神経ともに働きが低くなっています。あくまでも、自律神経はバランスが大事なのです。

近年の研究では、体全体の免疫細胞の約7割が、腸に集中していることがあきらかになりました。つまり、腸は栄養素を取り入れて毒素を排出するだけでなく、免疫をコントロールする人体最大の器官でもあるのです。

腸壁の内側にある免疫細胞は、腸内はもちろん、血流に乗って体内のいたるところで有害なものから体を防御します。

腸が整えば、便秘や下痢はもとより、風邪やインフルエンザなどにもかかりにくくなり、有害物質の発生を抑えられて、がんになる可能性も低くなります。

もちろん、肌がきれいになるなど、体のなかの美しさが外にも現れます。

腸内環境をよくするだけで、あなたの人生は本当に変わるのです。