ストレスの蓄積による「心の疲れ」

そしてもうひとつ、わたしたちの体を疲弊させる大きな原因があります。ストレスによる心の疲れです。

ストレスの原因は「人間関係が9割、環境の影響が1割」ともいわれます。わたしたちは、ふだん自分のことを中心に考えて生きているようでいて、多くの場合、他人やまわりのことに気を取られ、気にし過ぎて生きています。

案外、自分自身を見失っていることが多いのです。

加えて、2019年末に発生した新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るい、いまだその余波が続いています。ふだんの人間関係で心が疲れていたところに、さらに環境からの強いストレスがのしかかったことで、多くの人がこれまで経験したことのないほどの疲れと、強い不安を抱えてしまったことでしょう。

自分でコントロールできないほどの大きな不安にとらわれると、体の免疫機能が落ちてしまい、疲れが一気にあふれ出てきます。そして、時間を経るごとにストレスが積み重なって、メンタルを狂わせてしまうのです。

漫然とスマホを見ている女性
写真=iStock.com/maruco
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自分の「やるべきこと」をやろう

自分ではどうしようもない災難に襲われたとき、わたしたちはどのようにして自分の心身を守ればいいのでしょうか?

わたしは、いまこそ、「自分のやるべきことをやる」という基本に立ち返るべきだと伝えています。

たとえば、新型コロナウイルス感染症でいうならば、まずきちんと手洗いやうがいをする。

そして、食事で十分な栄養を摂り、しっかり睡眠を取る。

人が密集するところには極力行かないようにして、熱や咳、倦怠けんたい感や悪寒があれば会社に行ったり遊びに出かけたりしないで安静にする。

そんな「あたりまえ」のことを多くの人が守れないのなら、どんな対策をしても社会はなかなか回復しないのです。

医学的観点からいえば、ウイルスの感染拡大を抑えるために一時的に都市を封鎖し、人の流れを止めることが効果的であることはいうまでもありません(実際にそのような政策を行った国々もありました)。

一方で、経済的・社会的な影響を考えると、会社や学校などを簡単に止めるべきではありません。そんなジレンマのなかでわたしたちは重大な判断をし、これからも少しずつ、前へ進んでいかなければなりません。

だからこそ、わたしたち一人ひとりが健全な生活習慣と、「あたりまえ」のことを守る倫理観を持つ必要があります。

その意味では、今回の出来事とそれに対するわたしたちの行動は、一人ひとりの倫理観を根底から問うものだったともいえるでしょう。