寺院の朝の「お勤め」に参加する外国人宿泊客も増加中

5階以上は、客室364室の大阪エクセルホテル東急が入る。16階にフロントロビーやバーを設けており、バーカウンターからは難波別院の本堂が俯瞰できる。空間のしつらいからは、仏教色を感じることはできないが、大阪の街をイメージしたカーペットが敷かれているなどの工夫を凝らしている。

大阪エクセルホテル東急のロビー
撮影=鵜飼秀徳
大阪エクセルホテル東急のロビー
バーラウンジから本堂などの南御堂境内を俯瞰する
撮影=鵜飼秀徳
バーラウンジから本堂などの南御堂境内を俯瞰する

冒頭で触れた、京都にある浄教寺が三井ガーデンホテルと一体となったケースでは、旧本堂の建材をホテルロビーに使用したり、ロビーと本堂とを隣り合わせにしたり、仏教色を全面に押し出すコンセプトであった。一方で、大阪エクセルホテル東急は、ムスリムの宿泊客など他の信仰への配慮から、宗教色を廃しているのが特徴といえる。

とはいえ、外国人旅行者にとって、難波別院は日本の宗教文化に触れられる格好の地。特に本堂で行われる朝のお勤めは、荘厳な雰囲気が体験できる。大阪エクセルホテル東急は宿坊ではないので、朝のお勤めは自由参加だ。コロナ禍が収束したいま、お勤めに参加する外国人宿泊客は増えてきているという。

もともと難波別院での朝のお勤めは、午前7時とかなり早い時間帯に設定されていた。しかし、建て替えを機に、宿泊客や近隣のオフィスのビジネスパーソンの通勤時間に合わせた午後8時に変更した。すると、飛躍的に、参拝客が増えたという。伝統的な仏教教団において、守るべき伝統は守り、変えるべき慣習は状況によって変えるという柔軟な姿勢が感じられる。

難波別院では2023(令和5)年5月末をもって、本堂の耐震改修工事を終える。山門と本堂の工事完了に伴い、新生難波別院は大阪のランドマークとしての歩みを始める。

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