人生で初めて「偏差値35」を取った

ですが、ここで意外な落とし穴がありました。日本での医師国家試験の存在です。アメリカの医師国家試験とアメリカの大学病院で研修医として採用されるための応募書類を用意したり面接したりと莫大ばくだいな時間とエネルギーを使っていたため、日本の国家試験の勉強をする余裕が全くなかったのです。英語での医師国家試験に受かったんだから、日本語は受かるだろうと私は高をくくっていたところもあったと思います。しかし、やはり試験というものは、その試験のために準備をしないといい結果は得られません。今だから言える話なんですが、国家試験の1カ月前に模試があって、偏差値35を取りました。

「このままでは落ちる」と本当にパニックになりました。誰にも見られなくなったので、模試の成績をシュレッダーにかけたくらい。今まで見たことのない数字だったので、とにかく驚いてしまったんです。

勉強
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「このままでは落ちる」ということは「このまま」という状況を変える以外の選択肢がないと理解しました。そこで、また一日18時間ほどの猛勉強をはじめます。そして、きちんと日本でも国家試験に合格することができました。ただこの方法も他人にはおすすめしません。

当時の私は良く言えば「短期集中型」だったんです。年を重ねていくうちに痛いほど実感したのですが、本当はコツコツやるのが一番いいんですよ。地道な努力に勝るものはありません。

「史上最年少の日本人研修医」から「劣等生」に…

卒業と同時に渡米し、イェール大学の研修医になりました。日本人としてアメリカで研修医になったのは、私が史上最年少でした。前例がない中、手探りで見つけ出し、自分のために勝ち取ったんだ。そう思うと、本当に嬉しくて、誇らしい気持ちでいっぱいでした。

ところが、アメリカに渡ると、私はいきなり劣等生になってしまいます。なにもサボっていたわけではありません。そこには様々な理由がありました。

まずは日本とアメリカの医療教育が大きく異なっていたこと。アメリカは実践型で、医学部2年生から病棟へ行き、実際の患者さんを見ながら学んでいきます。一方で日本での医学生は、教科書的に知識を学び、国家試験に合格してから、現場に入っていきます。医療教育の良し悪しではありませんが、私に実戦経験が足りていないのは明らかでした。他の国から来ている研修医たちも、基本的には自分の国で数年の現場経験を積んだ人ばかりでした。