「就職人気が下がる業界」は銀行・信金がダントツ
さらに、ブンナビが19年12月に行った学生アンケート調査によると、「今年『就職人気が下がる』と思うのはどの業界ですか」という問いに対して、「都市銀行/地方銀行/信用金庫」と答えた人は44.8%と、他の業界を圧倒した。同じ金融業界で「証券会社」は9%、「生命保険/損害保険」は10.7%だった。金融業界の凋落は顕著だ。
かつて金融界、とりわけ銀行は就職戦線の花形だった。ホイチョイ・プロダクションズが手掛けた『バブルへGO‼ タイムマシンはドラム式』(2007年)という映画があったが、主人公を演じる広末涼子がタイムマシンで1980年代後半のバブル期に戻り、遭遇する若者に劇団ひとり演じる就職が内定した大学生がいる。
彼は学生ながら1万円札を惜しげもなく使い、パーティーに明け暮れる。その彼が女性をナンパするときに使うフレーズが、「僕、チョー銀(日本長期信用銀行と思われる)に内定しているから」だった。これを聞いた広末涼子扮する主人公は、「その銀行潰れるよ」と答えるが、劇団ひとりは「銀行が潰れるわけないじゃない」と信じない。バブル期まで銀行はどこも不倒神話が支配していた。
「30代で年収2000万円」がバブル崩壊で一転
「バブル期は担保となる不動産価格がうなぎ上りで湯水のごとく融資した。どこの銀行も人手が欲しくて新卒を大量採用し、給与も30代で2000万円台はざらだった」(メガバンク元役員)という。「取引先からはお中元・お歳暮で高価な品が届けられる。仕立て権付きスーツなどは挨拶代わりだった」(同)というすさまじさだった。学生の就職ランキングでも銀行が上位を独占していた時代だ。
しかし、バブル崩壊ですべては暗転した。不動産、ノンバンクなどに貸し付けた資金はことごとく焦げつき、担保価値も暴落。銀行冬の時代のはじまりだった。
不良債権の処理に奔走する銀行員は、日々、融資の回収に追われ、前向きな仕事はできない。そして果ては銀行そのものが消滅した。平成の31年間に破綻した銀行や信用金庫、信用組合などは180を超える。大手銀行(都市銀行、信託銀行、長期信用銀行)も23行から5グループに集約された。
「再編と言えば聞こえがいいが、破綻したためにいやいや統合したのが実態だった。大きすぎて潰せない規模にまで図体を大きくする。メガバンク誕生の舞台裏はそんなものだった」(元メガバンク役員)という。
だが、そうした破綻の嵐の中で、唯一、生き残ったのが第一地銀だった。