日経平均株価が3万円を超え、33年ぶりに最高値を更新した。日本経済はこれからどうなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「インフレは止まらず、株価はバブル以来の水準に上昇している。日銀による金融引き締めが不可欠だが、そうすると日本円が一気に紙くず化する恐れがある」という――。
バブル崩壊後の最高値を更新する3万1086円82銭となった日経平均株価の終値を示すモニター=2023年5月22日午後、東京都中央区
写真=時事通信フォト
バブル崩壊後の最高値を更新する3万1086円82銭となった日経平均株価の終値を示すモニター=2023年5月22日午後、東京都中央区

景気回復、インフレになったら日本経済はダメになる

私はこの10年間、「逆説的なようだが、景気が良くなったり、インフレになったりしたら日本は終わりだ」と言い続けてきた。

いよいよその時が近づきつつあるのかもしれない。

日本政府と日銀は一体化し、事実上、統合政府論の実践である「財政ファイナンス」(財政赤字を賄うために国債などを中央銀行が直接引き受けること)に奥深くまで踏み込んでしまっているからだ。日銀の黒田東彦前総裁が始めた異次元緩和がそれだ。

財政ファイナンスを行った国はどうなるのか。通貨の価値が急速に失われ、物価上昇が勢いよく加速するハイパーインフレに陥るのは歴史の教えるところである。

25年近く前の話だ。昼寝の最中に「日銀がつぶれました」というテレビニュースが流れてきた。すぐにアナウンサーが「日債銀の誤りでした」と訂正したものの、びっくり仰天して目がすっかり覚めてしまった。

しかし、今ならまったく驚かない。「あ、そう」と、ふたたび昼寝に戻ってしまうかもしれない。日銀破綻は十分ありうることだと思っているからだ。

日銀の一番大切な仕事は「物価の安定」だが…

国債を大量に保有する日銀は、長期金利の変動幅が0.25%から0.5%に上昇しただけで膨大な含み損を抱えることになった。日銀が債務超過に陥り、日本円の信頼を失う危険性がある。