酒やビールと一緒に介護用おむつを配達する

同社は酒やビール、お米など重いものを配達して、顧客に喜ばれています。今後もっといろいろな商品を届けるようになれば、需要はさらに広がります。

たとえば、この同社が考えていることの一つが、介護用おむつです。酒やお米を届けてほしいという人たちは、かなり限定されています。ある程度高齢で買い物には行けるけれど重いものを持って帰れない人、あるいは足腰が弱ってきて買い物に出るのが億劫な人、さらに子育てで忙しく、買い物に行く時間がないから持ってきてほしい人たちです。そうした人たちに向けて、別の商品も配達するのです。

荷物の受け渡し
写真=iStock.com/PokPak05
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現代日本で、こうしたビジネスモデルをつくれるところは、ほとんどありません。このビジネスモデルでかつて最強だったのが、松下電器(現パナソニック)のショップ店「ナショナルのお店(現パナソニックのお店)」でした。同ショップ店は、電球の交換一つでも、すぐに家まで来て、やってくれました。

これは同ショップ店にとってもチャンスで、交換のために家の中に入れば、そこには冷蔵庫もあれば、テレビもあります。「テレビの調子はどうですか?」「そろそろ古くなっていませんか?」などと提案し、新しい家電製品を買ってもらうことができるのです。

同ショップ店はかなり数を減らし、玄関を開けて中まで入れる人は、そうそういません。手渡しが主流だったアマゾンの配達も、玄関前までしか届けない「置き配達」が主流になっています。

このような流れの中でカクヤスグループこそ唯一それができると思って質問したところ、そのとおりの答えが返ってきたわけです。当然この会社は応援しようとなりました。

「将来の夢」が変わってしまう社長も

もちろん思ったとおりの答えが返ってこないケースもあります。「このビジネスは、こんな可能性が広がっているのではないか」と思って質問したところ、「まだ新しいマーケットなので、そのようなデータがないんです」などと拍子抜けするような答えをする社長もいます。

でもそれは公のデータがないだけで、自分でイメージすればいい話です。あるいは、いまある何かに置き換えて語ればいいのです。「GDPの何%になります」でもいいわけで、答えようはいくらでもあります。答えられないのは、ふだんから何も考えていないからでしょう。

一方、最初は有望と思ったのに、のちに期待外れとなるケースもあります。ある旅行関連の会社の社長は、デビュー戦で「父を超えたい」と言っていました。父が小売業で大きく成功し、「最低でも父を超えたい。私なんてまだまだです」と語っていました。その語り口に好感を持ち、その後株価も上がっていったのですが、しばらくすると悪評を聞くようになりました。

すでに別の会社を立ち上げ、その会社の方に力を入れているというのです。投資の方法を教える複眼経済塾の塾生3人から同じような話を聞き、「悪い噂を2人から聞いたらアウト」と考えている私からすると、距離を置きたくなります。

そういう目で見ると、当初は有望と思えたビジネスモデルも、非常に怪しいものに感じられてきました。一見、画期的に思えたビジネスモデルが、いざ自分で使ってみると、かなり使い勝手が悪いことにも気づきました。

おそらく彼は「父を超えたい」という思いが、「よいサービスを提供して会社を大きくする」ではなく、別のところに向かっていったように思います。ある意味、人物を見誤ったケースで、私にとって反省材料の1つになっています。