社員教育について質問して成長の可能性を探る
社員についてどう考え、どう育てているか――。これも重要な質問で、どれだけ成長が期待できるマーケットであろうと、社長に夢があろうと、それを支えるのは人材です。そこで「会社を成長させるのは、最後は社員教育にかかっています。そこはどう考えていますか。具体的に何をしていますか」などと、聞くのです。
こうした質問は、他の株主からはあまり出ません。同じ人材に関する話でも、多くは細かいところをチクチクつつくものです。飲食業なら「店に行ったら注文から出てくるまで30分もかかりましたが、オペレーションはどうなっていますか」といった類いです。
こうしたことも身近な気づきとしては大事ですが、解決策を知ったところでこの会社がどこへ向かうかはわかりません。社長の夢や人柄を知るうえで、参考になるかどうかもわかりません。
人材教育で強く記憶に残っているのが店舗運営のコンサルタントなどを行うピアズです。
株主総会終了後に、社内を案内してもらったときです。案内役を務めたのが社内で一番張りきっているという若手の女性社員で、非常に好感が持てました。彼女を見て、この会社は人の育て方がうまいと感じました。
子連れ出社を認めている会社で見えたこと
またその時、社内に3歳ぐらいの子どもが遊び回っていました。この会社では社員が子どもを連れてきて仕事をしてもいいとのことで、「周りの人たちが迷惑に感じませんか?」と尋ねると「それを皆が受け入れています」という返事でした。やはり「この会社は社員を大事にしている」と感じました。
同社桑野社長には、別途、複眼経済塾主催の複眼IRで直接お話を聞いたのですが、とてもユニークな社員教育を行っていることがわかりました。同社では社員を入社させるにあたり、まず育ててくれた両親に手をついて「これまで育ててくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えるように指導しているそうです。それを言わない限り、入社を認めないのです。
さらに内定が決まった段階で、山口県萩市にある松下村塾か、鹿児島県南九州市にある知覧特攻平和会館に見学に行かせて、先人たちの思いを心に刻むそうです。
この会社は元々、携帯電話の販売店向けコンサルタントがメインの業務で、数時間待ちが当たり前だった携帯ショップを予約制にしたのも、この会社だそうです。携帯販売店における消費者との対話から得た「おもてなし」のノウハウを、今後は様々なサービスにいろいろな形で植えつけるのが自分たちの仕事と語っていました。
コロナ禍で事業が二転三転しているようですが、このような人材育成を行う会社なら今後も期待できると思います。