ミシュラン以上に信頼されているランキング
ただ世界的なフーディーたちは、そんな小さいコミュニティの中だけで動いているわけではありません。
先述しましたが、世界の飲食関係者にとっては、ミシュラン以上に信頼性を得ているといわれるものに「世界のベストレストラン50」があります。イギリスで『レストラン』という専門誌を発行するウィリアム・リード社が2002年からスタートさせたランキングです。
文字通り、世界中のレストランのランキングを行うもので、国と場所は毎年変わりますが、年に1回、ランキング発表のイベントが開催されています。
「世界のベストレストラン50」の上位に入ったレストランには予約が殺到し、メディアにも多く登場するだけに、いまや世界のトップレストランは、ミシュランガイド以上にここで上位に入ることを念頭に置いています。そして、そのランキングに世界のトップフーディーたちがとても大きく関わり、重要な役割を担っているのです。
というのも、ランキングを決める審査員は世界各国から選ばれた1040人ですが、「シェフやレストラン関係者」「フードライターなどのジャーナリスト」に加えて、「いわゆるフーディーと呼ばれる食通たち」が投票に関わるからです。フーディーの投票は全体の3分の1を占めますから、大変重要な決定権を持っています。
おいしいのは当たり前、何が体験できるかが評価される
審査基準はシンプルで「あなたにとってベストレストランとは?」ということ。「ベスト」の基準は人によってさまざまでいいとされ、料理のクオリティ、レストランの雰囲気やデザイン性、シェフの哲学や人間性、アクセスのしやすさなども投票の基準となるといわれます。
料理そのものの評価というより、「おいしいのは当たり前で、その上で何が体験できるのかが求められている」と、日本のチェアマンを務める中村孝則さんは話しています。(朝日新聞&「世界のベストレストラン50」に見る、美食のこれから 中村孝則さん 2018/08/31より)。
つまり、ミシュランがレストランに対する評価を紹介するガイドなのに対し、世界のベストレストラン50は人気ランキング。審査員も一定数、毎年常に入れ替わります。そして18カ月以内に実際に行ったレストランにしか投票できないので、世界中を飛び回って食べられる人しか審査員にはなれません。まさに、富裕層のためのレストランガイドといえるでしょう。
ここ数年でいえば、フードロスに取り組む社会活動家のシェフがいる店や、貧困者への食事提供などをしている店などが評価される傾向にあります。現在は「アジアのベストレストラン50」、「ラテンアメリカのベストレストラン50」などエリア分けしたランキングも派生しています。