「フーディー」と呼ばれる美食家たちが注目を集めている。日本ガストロノミー協会会長の柏原光太郎さんは「フーディーたちは、ネットやSNSを駆使して世界中の美味しいレストランを探し、そこに訪れるためのルートを開拓し、仲間を募って出かけている。世界のレストラン産業には、フーディーの動向がとても深く関わっている」という――。

※本稿は、柏原光太郎『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論――時代はガストロノミーツーリズム――』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

鉄板の上で焼いているサーロインステーキ肉
写真=iStock.com/kuppa_rock
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美味しい料理に出会うためにはネットワークが重要

さて、私の食文化における30年の歩みとフーディーたちの進化は、かなり似たようなカーブを描いています。

私がフェイスブックで数多くの食いしん坊と知り合ったように、フーディーたちも、ネットやSNSを駆使して世界中の美味しいレストランを探し、そこに訪れるためのルートを開拓し、仲間を募って出かけています。

そのために重要なのがネットワークであり、同じ趣味を持つ仲間なのです。彼らにとっては「美味しい料理に出合う」ことはなによりも重要。しかし、その料理が美味しいか美味しくないかの基準は、人によって違います。

私だって「この人が美味しいというのなら行ったことがなくても他人に推薦できるが、あの人がいくら美味しいといっても信じられない」という場合はあります。それはその人々と私の料理の好みの違いであったりもするし、経済力だったりもします。それ以前に料理に対するリテラシーの違いであったりもします。

銀座の有名ステーキ店は「ひとり100万円」が当たり前

なのでフーディーたちは同じような趣味嗜好を持つコミュニティの中で情報交換をするわけです。そこには趣味嗜好だけではなく、やはり経済力も加味されます。彼らが訪れたい店は世界中のフーディーが訪れたい店です。しかし店のキャパシティは決まっています。いい食材だって限られているし、いい料理人の給料もどんどん上がっています。

料理がアートと同じような価値を持っていくと、内装や器、場所にもこだわるようになっていきます。それはすべて価格に跳ね返るわけです。

いまや銀座や港区の寿司屋は一人前のお任せコースが5万円を超えるのも不思議ではなく、3万円しないと「安いね」といわれるほどです。お酒を入れたらふたりで10万円は最低でもかかると考えなければいけません。日本海のズワイガニや天然ふぐ、ジビエなどの料理が出る冬の日本料理店にいけば、ひとり10万円は普通です。

銀座の有名なステーキ屋は、最高級ワインしか置いていないため、それらを開けるとひとり100万円以上の支払いになるのは当たり前といわれていますし、料理だけでも20万円を無造作に超えるようです。しかしカウンターだけの簡素な内装の店です。