最新情報が飛び交う美食家のコミュニティ

そうしたレストランに行くことに価値を認めるかは人それぞれです。ファミリーレストランのステーキ御膳なら高くても1万円はしないわけで、それでいいという人にとっては銀座のステーキ屋に金を払う意味はまったく見いだせないでしょう。

しかし日本の最高級のアワビがすべてこの店にきて、黒毛和牛のシャトーブリアンの一番いい肉がここで食べられるのであれば、プライスレスだと感じる人もいます。

こうしたように、似たような価値観、経済的な価値を見いだせる人々がコミュニティを作っていくのです。

コミュニティはほとんどの場合クローズドで、存在すら知られていない場合も多々あります。そこでは「ミシュラン3つ星レストランの副料理長が来年、独立することが正式に決まったよ」「西麻布のあのフレンチのソムリエが今度、広尾の新しいレストランに転職するらしいよ」といった情報がいち早く飛び交います。

彼らにとっては、そうした情報を誰よりも早く知ること自体が快感なわけですが、コミュニティに属していると、さらに別の利点があるのです。

仕上げのソースをかけるシェフの手元
写真=iStock.com/KuzminSemen
※写真はイメージです

これから人気が出そうな店への参加権が得られる

たとえば有名レストランの副料理長の独立が決まった場合を考えてみましょう。そのコミュニティの誰かがそのシェフと親しかったら、彼は開業間もないシェフを応援したいと思うでしょう。しかも、有名店で修業していたシェフの独立ですから、すぐに人気が出て予約が取れない店になってしまうかもしれません。

ですから開業直後に店を1日貸し切り、まずは仲間で出かけるのです。となると、そのコミュニティに属することで、新規開店で今後人気が出そうな店に参加する権利が得られるわけです。

比較的大きなコミュニティであれば、フェイスブック内に専用のページを立てて、こんな感じで募集をします。

〈先日ミシュランの名店××から独立した友人の××シェフのフランス料理店を×月×日×時から貸し切りました。参加可能人数は15人。いまから募集します!〉

早い者順で参加できることが多いようですが、なかには「参加の方々の関係性を考慮するので早い者順ではありません」などと書かれる場合もあり、そうなると主催者との距離感が近いほうが当選になるのかもしれない、などと考えてしまうでしょう。