75歳以上の2割が窓口負担倍増

この中所得層の200万円というラインはかなり微妙だ。現在の厚生年金受給者の平均年金月額は14万5665円だから、年額は175万円だ。年金が平均より少し高い人や勤労収入がある人は、対象になる可能性が高い。

実際、政府の試算でも窓口負担倍増となるのは、75歳以上の2割、370万人と見込まれた。

この窓口負担増は、2021年6月に成立した医療制度改革関連法で決まっていたのだが、実施時期については2022年10月から2023年3月の間と、幅を持たせていた。

実際には、そのなかでもっとも早い時期に負担増が実施されたのだ。

社会保険料は111.3%も増えている

社会負担増政策の犠牲者になったのは、高齢者だけではない。一般の勤労者世帯も同じだ。

図表3は、総務省「家計調査」を用いて、消費税導入前と2021年度の家計の比較を行なったものだ。

消費税導入前(1988年度)と現在(2022年度)の家計の比較
出典=『ザイム真理教』(三五館シンシャ)

まず、勤労者世帯の家計を31年前と比較すると、世帯主収入は474万円から533万円へと12.5%増えている。

ところが、所得税と住民税を合わせた直接税は4万円増え、年金保険料や健康保険料などの社会保険料は41万円、111.3%も増えている。税金と社会保険料を合計した税社会保険料負担は45万円、50.1%増と、収入を圧倒する伸びを示している。その結果、手取り収入は14万円、3.8%しか増えていない。