細かく見ていくと、同じグレーゾーンでもローリスクに近い人から、「もう一歩で依存症」という境界線ギリギリの予備軍まで幅広く、副作用の表れ方もさまざまです。

また、ごく普通に職場に行っているなかにも、ハイリスク者やすでに依存症まで進行している人がいます。

ところが、「自分はちゃんと仕事をしているから大丈夫」だと言って、本人も周囲も気づいていない、「ちょっと変だ」と思いながら何も対策していないことが少なくありません。

働きながら依存症に陥る典型的なパターン

もしかして自分もグレーゾーン? 飲酒の習慣がある人なら、自分のリスクレベルがさっそく気になるところでしょう。

そこで、身近によくある事例として、グレーゾーンからもっと危険なレベルに足を踏み入れつつある、ビジネスパーソンA氏の週末の生活をご紹介しましょう。

A氏は会社の経理部に所属する30代の会社員ですが、ここ数年のうちにだんだんと酒量が増え、月曜から金曜は晩酌するのが習慣になっています。

「このごろ、飲みすぎだな」と自覚しているもののうまくコントロールできず、飲む量や時間が長くなってきています。ただし、毎日きちんと定刻に出勤し仕事をこなしています。

金曜日の午後になるとがぜん落ち着かなくなり、お酒のことが頭から離れません。そして、待ちに待ったアフターファイブ。一人暮らしのA氏は、帰宅途中にコンビニに寄ってお酒とつまみになる総菜を買い、帰宅するとさっそく飲みながらゲームをしたり、テレビを見たりするのがいつもの週末のすごし方です。

金曜の夜から日曜日の昼まで、飲んでは寝て、起きてはまた飲むの繰り返し。日曜の午後以降、翌日の出勤に備えて飲まなければ月曜からは問題なく働けます。飲みすぎを心配されても、「ちゃんと会社に行ってるから大丈夫」が常套句でした。

日曜の午後から飲むようになり二日酔いで月曜日は欠勤

ところが……半年ほどたったころから、A氏の週末にちょっとした変化が。日曜の午後も我慢できず飲んでしまうようになり、翌朝が二日酔いで辛くなってきたのです。そしてあるとき、ついに初めての「ポカ休」。出勤当日になって、急に「ちょっと体調不良で」と上司に休むことを伝えました。

そこから、飲酒欲求はさらにエスカレートしていきます。平日の日中もお酒を飲みたくなるので、通勤途中にコンビニに寄ってストロング系飲料などを2缶以上買い、まずはその場で1缶飲みます。もう1缶は通勤用のバッグに忍ばせて、昼休みに隠れてこっそり……。こうなるともう止まりません。今度はそこから帰宅までが我慢できず、最寄り駅前のコンビニで立ち飲みし、帰宅してまた飲むという状態に。ここまでくると、周囲の人も「あれ……Aさんが変だ」と気づき始めます。

これこそ、働きながら依存症になっていく人の典型的なパターンです。

「自分の(あるいは身近な人の)今の状態と似ている」と思った方、要注意です。